まえがき

本書の目的

AIエージェントは、単に文章を生成する道具ではない。適切な指示、文脈、ツール、権限、検証、承認を与えれば、調査、整理、下書き、実装補助、レビュー、運用支援、意思決定支援までを担う協働相手になる。一方で、扱いを誤れば、もっともらしい誤情報、機密情報の流出、誤送信、権限の過大付与、責任境界の曖昧化、チーム内対立の先送りを生む。

本書の目的は、AIエージェントを使いこなすための能力を、個人の小技ではなく、組織で再利用できる仕事の型として定義することである。

想定読者

  • AIエージェントを日常業務に取り入れたい実務担当者
  • チームのAI活用を管理するマネージャー、リーダー、PM
  • 社内AI活用を推進するAI CoE、情シス、セキュリティ、教育担当
  • AIを使った開発・運用・業務改善に関わるエンジニア
  • AI活用を投資判断、組織設計、人材育成に接続したい経営層

前提知識

  • 生成AIツールを使ったことがある
  • 自分の業務の目的、制約、成果物を言語化できる
  • 組織の情報管理、承認、レビューが必要であることを理解している

Git、Issue、Pull Request、CI/CD、RAG、MCP、LLM API の詳細知識は必須ではない。ただし、エンジニア向けの章では、ツール、権限、ログ、評価の設計を扱う。

本書の中核フレームワーク

本書は、次の6層でAIエージェント協働を整理する。

Work: どの仕事にAIを使うか
Request: AIに何を依頼するか
Context: AIに何を渡すか
Delegation: どう分解し、どこで止めるか
Control: どう検証し、どう制御するか
Human / Org: 人間が何を判断し、どう学習するか

この6層を使うことで、AI活用を「プロンプトの良し悪し」ではなく、業務設計、品質管理、権限管理、組織学習の問題として扱える。

本書の読み方

全社員向けには第1章から第6章までを推奨する。マネージャーは第7章、第10章、第11章から第13章を重点的に読む。エンジニア、AI推進担当、セキュリティ担当は第4章、第7章から第10章を重点的に読む。経営層は第2章、第10章、第11章、第13章、第16章を先に読めばよい。

各章では、概念だけでなく成果物を作る。成果物は、AIエージェント依頼書、Context Pack、AI出力レビュー表、ツール権限マトリクス、判断前チェックリスト、Connection Debt診断、AI実験設計シートなどである。

本書の立場

本書は、AIに仕事を任せるための本である。同時に、人間が逃げてはいけない仕事を見極めるための本でもある。AIが実行力を高めるほど、人間には、何をやるか、何をやめるか、誰と何を話すか、どの失敗から学ぶかを決める責任が残る。

本書は、AIを人格化しない。AIエージェントは、確率的な生成、検索、ツール実行、状態管理、評価、承認を組み合わせた業務システムとして扱う。

フィードバック

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