付録C:用語集

この用語集は、本文で使う概念を短く定義し、実務でどの判断に使うかと関連章を示します。用語だけを覚えるのではなく、定義のリンク先で前提、根拠、確認者、成果物への落とし込みを確認してください。

C.0 読み方

  • 定義: 本書での実務上の意味です。サービス固有の機能名や特定製品の仕様を意味しません。
  • 分類(主要語): 本書固有か一般概念かを混同しやすい語では、「本書独自の運用定義」か「一般概念」かを示します。一般概念でも、本書で使うテンプレートや適用手順は本書独自です。
  • 出典境界(必要な語): 外部標準・代表資料との関係を確認すべき語では、本書が独自に定める範囲を示します。外部リンクには確認日を付けます。
  • 使いどころ: その用語を使って、何を決めたり確認したりするかを示します。
  • 関連章: 定義を手順や成果物へ展開する本文へのリンクです。
  • 相互リンク(主要語): 用語集から関連章へ移動でき、本文で定義を初めて説明する箇所から用語集へ戻れるようにします。

C.1 思考・情報・論証

task brief

定義: 作る成果物、読み手、意思決定点、入力材料、制約、受け入れ基準、承認者を、AIへ依頼する前に定義する短い業務設計書です。

使いどころ: 「要約して」のような依頼を、誰が何を判断するための成果物かへ変換します。目的が変われば、出力形式や確認者も変わります。

関連章: 第5章:AIへの指示(プロンプト)設計第8章:AI活用の具体的場面

論点

定義: その成果物で答えるべき問い、または意思決定者が確認すべき争点です。話題全体ではなく、判断可能な問いとして表現します。

使いどころ: 情報収集の範囲と、本文に残す根拠を絞ります。論点が曖昧なまま出力を整えても、読み手の判断にはつながりません。

関連章: 第2章:論理的思考の基本構造第4章:問題解決の論理プロセス

evidence matrix

定義: 主張、根拠、出典、確認日、確認状態、反証や不足情報を行単位で対応づける表です。

使いどころ: 事実と解釈を混ぜず、未確認の主張を提出前に見つけます。結論の強さを根拠の強さに合わせるために使います。

関連章: 第3章:情報の整理と分析第7章:批判的思考とメディアリテラシー第10章:論理的な文書作成

source hierarchy

定義: 目的と主張に応じて、一次情報、公式資料、専門家資料、報道、二次情報などの信頼性と適合性を比較する考え方です。

使いどころ: 「出典がある」だけで十分とせず、その主張に適した根拠かを確認します。最新性、作成者、方法、対象範囲も確認対象です。

関連章: 第7章:批判的思考とメディアリテラシー第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

provenance

定義: 情報や生成物がどこから来て、誰がいつどの手順で加工・確認したかを追跡できる来歴です。

使いどころ: 出典、入力、生成、編集、承認のつながりを記録し、後から確認・訂正できるようにします。来歴が不明な素材は、確度を上げずに要確認として扱います。

関連章: 第7章:批判的思考とメディアリテラシー第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

C.2 AI協働・評価・安全

context design

定義: AIへ渡す背景、目的、読み手、制約、既知情報、不明点、参照範囲を、必要十分な単位に設計することです。

使いどころ: 情報を多く渡すことではなく、判断に必要な文脈と渡してはいけない情報を分けます。不要な機密情報を追加しないことも設計の一部です。

関連章: 第5章:AIへの指示(プロンプト)設計第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

CRISP-P

分類: 本書独自の運用定義

定義: 指示を Context(文脈)、Role(期待する視点)、Instruction(作業)、Specification(制約・禁止事項・受け入れ基準)、Product(出力形式)の5要素で構造化する型です。本書では、CRISP-P単体を安全性や採否の保証とせず、task brief、context pack、output schema、acceptance criteriaの一部として使います。

出典境界: 本書ではこの5要素と適用範囲を運用定義として固定し、外部標準や第三者認証としては扱いません。

使いどころ: 指示の不足を要素別に見つけ、根拠、リスク、承認条件を後続の評価へ渡せる形にします。

関連章: 第5章:AIへの指示(プロンプト)設計

context pack

分類: 一般概念

定義: AIへ渡す目的、読み手、意思決定点、利用資料、用語、前提、除外情報、情報分類を、タスクごとにまとめた入力文脈の単位です。

出典境界: 十分で関連性のある文脈を入力へ含める考え方は一般的ですが、本書ではcontext packの項目構成を固定規格として扱いません。第5章の項目を再現可能な実装形式として採用します。

使いどころ: 必要な文脈と渡してはいけない情報を分け、利用資料の版、確認日、適用範囲をAIへの依頼と一緒に管理します。

関連章: 第5章:AIへの指示(プロンプト)設計第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

output schema

定義: AI出力に必要な項目、型や形式、順序、欠損時の扱い、禁止事項を定義した出力仕様です。本書では技術APIの実装ではなく、評価可能な成果物の構造を指します。

使いどころ: 自由文の見た目だけで評価せず、必須項目、根拠、リスク、承認情報を確認可能にします。

関連章: 第5章:AIへの指示(プロンプト)設計第6章:AIの出力を評価・改善する

受け入れ基準

定義: 成果物を完了・採用と判断するための、内容、根拠、形式、リスク、承認に関する確認条件です。

使いどころ: 「読みやすい」「それらしい」ではなく、提出や意思決定に必要な状態を事前に合意します。

関連章: 第4章:問題解決の論理プロセス第5章:AIへの指示(プロンプト)設計第6章:AIの出力を評価・改善する

CARE

分類: 本書独自の運用定義

定義: AI出力を Correctness(正確性)、Appropriateness(適切性)、Relevance(関連性)、Effectiveness(効果性)の4観点で評価する、本書の基本枠組みです。

出典境界: 4語の展開、評価項目、適用手順は本書の運用定義であり、本書では外部標準や第三者認証として扱いません。

使いどころ: 事実・数値の正しさ、読み手や目的への適合、意思決定点との関連、次の行動や承認への有効性を、文章の印象と分けて確認します。

関連章: 第6章:AIの出力を評価・改善する第10章:論理的な文書作成

CARE+

分類: 本書独自の運用定義

定義: CAREの4観点に、Evidence(根拠)、Risk(リスク)、Approval(承認条件)の3観点を追加し、AI出力を採用してよい条件を判断する本書の拡張枠組みです。

出典境界: CAREへの3観点の追加とCARE+という呼称は本書の運用定義です。組織の規程や法務・セキュリティ要件を置き換える規格としては扱いません。

使いどころ: CAREで出力品質を確認した後、根拠の確認状態、残リスク、編集者・承認者・保留条件まで含めて、採用、条件付き採用、差し戻し、不採用、保留を決めます。

関連章: 第6章:AIの出力を評価・改善する第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

fact-check log

定義: 主張ごとの出典、確認者、確認日、確認方法、確認結果、未確認事項を残す記録です。

使いどころ: 根拠確認を一度の印象評価で終わらせず、更新・差し戻し・承認時に追跡できるようにします。

関連章: 第3章:情報の整理と分析第7章:批判的思考とメディアリテラシー付録A:実践的なツール・テンプレート集

prompt injection

定義: 入力文書や外部コンテンツに埋め込まれた指示によって、AIの本来の目的、情報境界、確認手順を逸脱させようとする攻撃・誘導です。

使いどころ: 参照資料を命令ではなく未信頼データとして扱い、ツール権限、機密情報、出力先、人間の確認を分離します。

関連章: 第9章:AIリスク管理と倫理的配慮第14章:日常業務での実践

data classification

定義: 公開、社内限定、機密、個人情報、契約・法務などの区分に応じて、AIへの入力可否、抽象化、承認、保管範囲を決めることです。

使いどころ: AIへ渡してよい情報と渡してはいけない情報を、サービス名ではなく組織のルール・契約・目的に基づいて判断します。

関連章: 第9章:AIリスク管理と倫理的配慮第14章:日常業務での実践付録A:実践的なツール・テンプレート集

human-in-the-loop

定義: AIの出力や自動処理をそのまま採用せず、人間が事実、リスク、例外、承認、配布範囲を確認して最終判断する設計です。

使いどころ: AIの役割を初稿、分類、候補整理などに限定し、責任ある判断と承認の担当者を明示します。

関連章: 第6章:AIの出力を評価・改善する第9章:AIリスク管理と倫理的配慮第15章:論理的思考を活かしたリーダーシップ

synthetic content

分類: 一般概念

定義: AIを含むアルゴリズムによって、大幅に変更または生成された画像、動画、音声、テキストなどの情報です。AI生成か否かの二値判定だけでなく、来歴、加工範囲、利用目的に対して根拠として使えるかを確認します。

出典境界: 定義の範囲はNIST AI 100-4(2026-07-19確認)を代表資料とします。利用可否の4区分とtriage手順は本書の運用です。

使いどころ: 画像、グラフ、スクリーンショット、引用、AI要約について、出所、作成者、加工履歴、元データ、権利を確認し、利用可、条件付き利用、要確認、利用不可へ振り分けます。

関連章: 第7章:批判的思考とメディアリテラシー第9章:AIリスク管理と倫理的配慮

C.3 成果物・組織運用

BATNA

分類: 一般概念

定義: Best Alternative to a Negotiated Agreementの略で、交渉で合意に至らない場合に実行する最善の代替案です。

出典境界: 定義はHarvard Law School Program on Negotiationの解説(2026-07-19確認)を代表資料とします。negotiation option / BATNA mapの項目構成と承認運用は本書独自です。

使いどころ: 現実的な代替案と現在の提案を同じ条件で比較し、最低受け入れ条件、非交渉条件、追加承認が必要な譲歩を明確にします。相手を威圧する材料や、未確認の相手BATNAを事実として扱うためには使いません。

関連章: 第13章:論理的な営業・提案・交渉

意思決定ログ

定義: 決定したこと、採用しなかった選択肢、根拠、担当者、期限、見直し条件を、後から追跡できる形で残す記録です。

使いどころ: 会議やプロジェクトで、結論だけでなく前提と再判断の条件を共有します。

関連章: 第12章:効果的な会議・議論術第16章:プロジェクト管理と問題解決

マルチモーダル入力

定義: 文章だけでなく、PDF、画像、表、グラフ、画面、音声など複数形式の素材を業務の入力として扱うことです。

使いどころ: 素材の出所、読み取り誤り、機密区分、利用可否、確認者を分けて記録します。形式が増えても根拠確認と承認は省略しません。

関連章: 第8章:AI活用の具体的場面第14章:日常業務での実践

責任分界

定義: AI、人間の作成者、レビュー担当、承認者、業務オーナーが、それぞれ何を決め、何を確認し、何に責任を持つかを明示することです。

使いどころ: AIが生成したことを責任の所在と取り違えず、例外処理、承認、配布、訂正の担当者を残します。

関連章: 第9章:AIリスク管理と倫理的配慮第15章:論理的思考を活かしたリーダーシップ

template asset register

定義: promptやテンプレートの所有者、用途、適用条件、版、更新日、レビュー日、廃止条件を管理する台帳です。

使いどころ: 一度作った資産を無期限に使わず、組織のルールや業務条件の変更に合わせて更新・廃止します。

関連章: 第15章:論理的思考を活かしたリーダーシップ第17章:継続的学習と思考力向上付録A:実践的なツール・テンプレート集

継続的改善

定義: 結果、レビュー、利用者のフィードバック、更新確認を次の問い・手順・資産へ反映する反復運用です。

使いどころ: 成功例だけを保存せず、差し戻し理由、未確認事項、適用外条件、廃止判断も記録して、次のサイクルの品質を上げます。

関連章: 第16章:プロジェクト管理と問題解決第17章:継続的学習と思考力向上