第5章:データ分類と取り扱い
この章で学ぶこと
- データ分類を定義する
- 保存場所とアクセス制御、保持期間を揃える
- 扱い判断を表に落とす
- AI / 外部サービスへ投入してよい情報かを分類で判断する
成果物(または判断基準)
本文
データは保管場所と権限設定の不整合で事故につながりやすい。分類→保存場所→アクセス制御→保持 / 削除→外部共有 / AI 投入可否まで一貫させる。
分類は厳密さより、運用で迷わない定義にすることが重要である。判断に迷う場合は上位(厳しい側)に寄せる。
分類で最低限分けるもの
本書の分類は法務判断を代替しない。組織の規程や法令上の判断が必要な場合は、所定の窓口に確認する。
| 区分 | 例 | 扱いの原則 |
|---|---|---|
| 公開 | 公開サイト、公開 README、公開済み仕様 | 公開してよい範囲でも改ざん・誤情報には注意する |
| 社外秘 | 設計、運用手順、内部障害情報、未公開ロードマップ | 社外共有、公開リンク、外部AI投入は原則禁止または承認制にする |
| 秘密情報 | APIキー、トークン、秘密鍵、パスワード、セッションID | 貼り付け禁止。漏えい疑いは失効 / ローテーションする |
| 個人情報 | 氏名、メール、住所、電話、ユーザーIDと行動履歴の紐付け | 目的、保存場所、権限、保持期間、削除手順を明確にする |
| 要配慮個人情報等の機微度の高い情報 | 病歴、信条、本人に重大な不利益を与え得る属性など | 原則として扱わない。必要時は法務 / プライバシー窓口と承認を必須にする |
「個人情報」「個人データ」「要配慮個人情報」などの法的な区分は国や制度で定義が異なる。教材内では実務上の安全側の判断を優先し、迷う場合は個人情報または要配慮個人情報等の機微度の高い情報として扱う。
AI / 外部サービス投入の判断
生成AI、翻訳、チケット管理、ログ解析、スクリーンショット共有など、組織外のサービスへ情報を渡す行為は外部共有として扱う。
| 投入する情報 | 判断 |
|---|---|
| 公開情報のみ | 利用規約と出力の正確性を確認したうえで利用可 |
| 社外秘の設計 / 運用情報 | 組織承認、契約、保存 / 学習利用条件、削除条件を確認する |
| 秘密情報 | 投入禁止。伏字でも復元可能な断片がないか確認する |
| 個人情報 | 原則投入しない。必要な場合は匿名化 / 仮名化、目的、同意 / 契約、保持 / 削除を確認する |
| 本番ログ / 障害証跡 | 秘密情報・個人情報をマスクし、request-id など調査用識別子だけを残す |
AI 出力を採用する場合も、入力した情報の分類、出力に秘密情報・個人情報が含まれないこと、出力を実行してよい根拠を記録する。
図の要点: まず情報を分類し、秘密情報は投入しない。社外秘と個人情報は現場だけで可否を決めず、契約、目的、最小化、保存・削除条件を所定の窓口と確認する。
実務レビューゲート: プライバシーと外部共有
個人情報・要配慮個人情報等の機微度の高い情報は、技術的なマスキングだけでなく、目的、契約、委託、保存場所、削除、報告 / 通知判断まで含めて扱う。
- 法務判断を分離する: 本書の分類表は現場の安全側判断であり、個人情報保護法、GDPR、委託契約、顧客要件の解釈を代替しない。判断が必要な場合は法務 / プライバシー窓口へエスカレーションする。
- 漏えい等の報告期限を固定しない: 個人情報保護委員会のガイドラインや組織規程は更新され得る。漏えい等が疑われる場合は、速報・確報・本人通知の要否と期限を最新の一次情報で確認する。
- 外部サービスの扱い: 生成AI、翻訳、チケット管理、ログ解析、スクリーンショット共有、SaaS 連携は外部共有として扱い、利用規約、学習利用、保存期間、削除方法、委託 / 越境移転の扱いを確認する。
- 匿名化 / 仮名化の限界: ID、時刻、IP、端末情報、行動履歴を組み合わせると再識別につながる場合がある。個人情報ではないと断定せず、目的と最小化を記録する。
- 参照元: 個人情報保護委員会の法令・ガイドライン、NIST Privacy Framework 1.0、NIST SP 800-122、組織のデータ分類規程を確認日付きで参照する。
具体例(悪い例→良い例)
悪い例
個人情報を共有ドライブに置く
アクセス権限は全員
良い例
データ分類表で個人情報を定義
保存場所を限定し、最小権限でアクセス制御
保持期間と削除手順を定義
AI / 外部サービスへ投入しない。必要なら匿名化し承認を残す
チェックリスト
- 分類が定義されている
- 保存場所とアクセス制御が一致している
- 保持期間 / 削除手順がある
- AI / 外部サービス投入可否が決まっている
- 個人情報・要配慮個人情報等の機微度の高い情報は安全側に分類している
- 外部サービス利用時の保存期間、学習利用、削除方法、委託 / 越境移転の扱いを確認した
- 漏えい等の疑いに備え、報告 / 通知判断の窓口と最新ガイドライン確認手順を決めている
まとめ
- データ分類を定義し、保存場所 / アクセス制御 / 保持期間を分類と整合させる
- AI / 外部サービスへの投入は外部共有として扱い、分類・承認・マスキング・削除条件を確認する
- 迷う場合は上位(厳しい側)に寄せ、判断基準を表(データ分類表)に落とし込む
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