第1章:実務ドキュメントの全体像(目的別・成果物別マップ)
この章で学ぶこと
- README / 手順書 / Runbook / ADR / 障害報告 / ポストモーテムの使い分け基準を理解する
- 目的(理解 / 実行 / 判断)に応じて成果物を選ぶ
- 成果物を「マップ」として整理する
- 監査メモを、修正判断と変更不要判断の証跡として位置づける
この章の成果物(または判断基準)
本文
実務で起きがちな失敗は、成果物が混在すること(例: README に運用手順が埋もれる)。まず「何のための文書か」を固定する。
使い分け(最小)
- README: 入口。何があり、どう動かすか
- 手順書: 1回の作業を再現する
- Runbook: 異常時を含む運用を回す
- ADR: 判断の背景と選択肢を残す
- 障害報告: 障害中から復旧直後に、確認できた事象・影響・タイムライン・対応状況を関係者へ説明する(障害報告テンプレ)
- ポストモーテム: 復旧後に事実関係が安定してから、真因・背後要因・再発防止・検証を学習成果として残す(ポストモーテムテンプレ)
- 監査メモ: 調査範囲、根拠、変更判断、変更不要判断を残す
障害報告はリアルタイムの状況共有と説明責任、ポストモーテムは復旧後の学習と再発防止を担う。障害報告を真因分析の完成まで待たせず、ポストモーテムを顧客・関係者への状況報告の代わりにしない。両者は同じ障害を扱っても別成果物であり、障害報告からポストモーテムと follow-up Issue / PR へ事実関係を引き継ぐ。
この章のゴールは「どの成果物を書くべきか」を説明できる状態にすること。
監査メモの位置づけ
他書籍レビュー、外部仕様確認、既存 Runbook の棚卸しでは、必ずしも本文変更が発生するとは限らない。変更しなかった判断も、あとから再確認できるように残す必要がある。
監査メモには、少なくとも次を記録する。
| 項目 | 目的 |
|---|---|
| 確認範囲 | どの章、テンプレート、公開ページ、外部資料を見たかを示す |
| 根拠 | 一次情報、実行ログ、PR、Issue、過去障害など判断材料を示す |
| 判断 | 修正する、変更不要、別 Issue に分離する、のいずれかを明確にする |
| 再確認条件 | 仕様変更、障害再発、Owner 変更など再確認のきっかけを示す |
具体例(悪い例→良い例)
悪い例
README に以下を全部書く
- デプロイ手順
- 障害時の対応
- 意思決定の背景
(どこに何があるか分からない)
良い例
README は入口に絞る
- Quick Start
- 依存/権限
- 運用導線(Runbook へのリンク)
デプロイは手順書、障害対応は Runbook、状況と影響の説明は障害報告、
復旧後の学習と再発防止はポストモーテム、判断は ADR に分離
チェックリスト
- 目的(理解 / 実行 / 判断)が明確
- 成果物が混ざっていない
- 入口(README)から導線がある
- 変更判断と変更不要判断を残す場所がある
まとめ
- 目的(理解 / 実行 / 判断)から成果物を選び、1つの文書に混在させない
- README を入口にし、手順書 / Runbook / ADR / 障害報告 / ポストモーテムへ導線を用意する
- 監査メモは「何を確認し、なぜ変更した / しなかったか」を残す成果物として扱う
次章への接続
- 次章: 第2章