第9章:障害報告・ポストモーテム(タイムライン / 真因 / 再発防止)
この章で学ぶこと
- 障害報告は「説明責任」のために整理する
- ポストモーテムは「再発防止を行動に落とす」ために書く
- テンプレと相互参照し、運用に反映する
- follow-up Issue / PR と検証結果まで追跡する
この章の成果物(または判断基準)
- 障害報告(付録: 障害報告テンプレ)
- ポストモーテム(付録: ポストモーテムテンプレ)
本文
本章は、テンプレ→記入例→落とし穴→チェックリストの順で整理する。
責務分界
障害報告とポストモーテムは、同じ障害を扱っても目的と確定時期が異なる。まず障害報告で確認済みの事実と対応状況を共有し、復旧後に証拠と関係者の認識が揃ってからポストモーテムで学習と改善行動を確定する。一方で、障害報告をポストモーテムの完成まで保留したり、ポストモーテムを障害中の状況共有に使ったりしない。
| 成果物 | 作成開始・確定時期 | 主な読者 | 必須項目 | 非目的 | follow-up |
|---|---|---|---|---|---|
| 障害報告 | 障害中から作成・更新し、復旧後に影響とタイムラインを確定する | 影響を受けた関係者、運用、サポート、管理者 | 事象、影響範囲と期間、タイムライン、暫定対応と成功条件、恒久対策の担当・期限 | 未確認情報による断定、個人の責任追及、真因分析の完了を待つこと | 訂正履歴を残し、恒久対策とポストモーテムへ事実関係を引き継ぐ |
| ポストモーテム | 復旧後、証拠と事実関係が安定してから作成・合意する | 開発、運用、関連チーム、管理者 | 非難しない前提、事象と影響、直接原因と背後要因、再発防止、検知・手順改善、担当・期限・検証結果 | 障害中のリアルタイム状況共有、顧客向け障害通知、個人への責任帰属 | 改善を Issue / PR にし、担当・期限・状態・検証結果を追跡する |
障害報告の恒久対策欄は、復旧時点で分かる対策候補と追跡先を示す。深い原因分析と改善行動の合意はポストモーテムで行い、実装と有効性確認は follow-up Issue / PR で管理する。後続成果物で前提が変わった場合は、相互リンクと訂正履歴により差分を追跡できるようにする。
テンプレ
- 付録: 障害報告テンプレ
- 付録: ポストモーテムテンプレ
- 完成例: MiniShop 障害報告
- 完成例: MiniShop ポストモーテム
記入例(要点)
- タイムライン: いつ何を判断し実施したか
- 影響: 範囲と期間
- 真因: 直接原因/背後要因
- 再発防止: 期限/担当/検証
- 手順改善: Runbook / 手順書の更新
- フォローアップ: Issue / PR、検証結果、公開反映
よくある落とし穴
- 真因が整理されず、対策が「注意する」で終わる
- 再発防止が行動になっていない
- 影響範囲が曖昧
- 責任追及の文脈になる
具体例(悪い例→良い例)
悪い例
原因: 調査中(真因の説明なし)
対策: 注意する
影響: 影響あり(範囲/期間不明)
良い例
影響: 決済 API、10:12〜10:35、最大8%失敗
タイムライン: 検知→暫定→復旧→確認
真因: 接続プール設定が負荷に耐えない
再発防止: 設定見直し+負荷試験(期限/担当/検証)
手順改善: Runbook に初動/ロールバックを追記
チェックリスト
- 影響範囲と期間が明確
- タイムラインがある
- 真因が仕組みとして説明されている
- 再発防止が行動(期限/担当/検証)になっている
- 手順/検知に反映されている
- follow-up Issue / PR と検証結果が紐づいている
まとめ
- 障害報告は事象・影響・タイムラインを明確化し、説明責任を担保する
- ポストモーテムは真因と再発防止を行動(期限/担当/検証)に落とし、運用ドキュメントへ反映する
- フォローアップは Issue / PR と検証結果まで追跡し、対策が実行されたことを確認する
次章への接続
- 次章: 第10章