付録C 用語集

A

AAA (Authentication, Authorization, Accounting)

認証、認可、アカウンティング(監査)の3つのセキュリティ機能を表す概念。ネットワークセキュリティの基本フレームワーク。

ABAC (Attribute-Based Access Control)

属性ベースアクセス制御。ユーザー、リソース、環境の属性を組み合わせてアクセス制御を行う方式。

Access Token

リソースへのアクセス権限を表すトークン。通常、短い有効期限を持ち、特定のスコープに制限される。

ACL (Access Control List)

アクセス制御リスト。リソースごとに、誰がどのような操作を実行できるかを定義したリスト。

Adaptive Authentication

リスクベース認証とも呼ばれる。アクセスコンテキストに基づいて認証強度を動的に調整する方式。

API Key

APIへのアクセスを認証するための一意の識別子。通常、長い有効期限を持つが、スコープは限定的。

Argon2

パスワードハッシュアルゴリズムの一つ。2015年のPassword Hashing Competitionで優勝。メモリハード関数。

Assertion

認証や認可の文脈で、ユーザーやシステムの属性に関する主張。SAMLやJWTで使用される。

Asymmetric Encryption

非対称暗号。公開鍵と秘密鍵のペアを使用する暗号方式。RSAやECDSAが代表例。

Authentication

認証。ユーザーやシステムが主張する身元が正しいことを確認するプロセス。

Authentication Factor

認証要素。知識(パスワード)、所持(トークン)、生体(指紋)の3つのカテゴリに分類される。

Authenticator

認証器。FIDO2/WebAuthnにおいて、ユーザーの認証情報を生成・保管するデバイスまたはソフトウェア。

Authorization

認可。認証されたユーザーが特定のリソースや操作にアクセスする権限を持っているか判定するプロセス。

Authorization Code

OAuth 2.0のフローで使用される一時的なコード。アクセストークンと交換される。

Authorization Server

OAuth 2.0において、アクセストークンを発行するサーバー。

B

Basic Authentication

HTTPベーシック認証。ユーザー名とパスワードをBase64エンコードしてHTTPヘッダーで送信する単純な認証方式。

Bearer Token

HTTPのAuthorizationヘッダーで送信されるトークン。所持していることで認証を示す。

bcrypt

パスワードハッシュアルゴリズム。Blowfish暗号を基にした、計算量的に安全なハッシュ関数。

Biometric Authentication

生体認証。指紋、顔、虹彩などの生体情報を使用した認証方式。

Brute Force Attack

総当たり攻撃。可能なすべての組み合わせを試してパスワードを破る攻撃手法。

C

CA (Certificate Authority)

認証局。デジタル証明書を発行する信頼できる第三者機関。

CAPTCHA

Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart。人間とボットを区別するためのテスト。

Certificate Pinning

証明書ピンニング。特定の証明書のみを信頼することで、中間者攻撃を防ぐ手法。

Challenge-Response

チャレンジレスポンス認証。サーバーからのチャレンジに対して、クライアントが適切なレスポンスを返す認証方式。

Claim

クレーム。JWTやSAMLにおいて、エンティティに関する情報の断片。

Client Credentials

OAuth 2.0のグラントタイプの一つ。クライアントアプリケーション自体の認証に使用。

Client ID

OAuth 2.0において、クライアントアプリケーションを識別するための公開識別子。

Client Secret

OAuth 2.0において、クライアントアプリケーションを認証するための秘密情報。

CORS (Cross-Origin Resource Sharing)

異なるオリジン間でのリソース共有を可能にするメカニズム。

Credential

クレデンシャル。認証に使用される情報(パスワード、証明書、トークンなど)の総称。

Credential Stuffing

漏洩したユーザー名とパスワードの組み合わせを、他のサービスで試す攻撃手法。

CSRF (Cross-Site Request Forgery)

クロスサイトリクエストフォージェリ。ユーザーの意図しない操作を実行させる攻撃。

CSP (Content Security Policy)

コンテンツセキュリティポリシー。XSS攻撃を防ぐためのセキュリティ機能。

D

Delegation

委譲。ユーザーが自身の権限の一部を他のエンティティに委譲すること。

Device Fingerprinting

デバイスフィンガープリンティング。ブラウザやデバイスの特徴を組み合わせて一意に識別する技術。

DID (Decentralized Identifier)

分散型識別子。中央管理者なしに、検証可能でユーザーが管理できる識別子。

Digest Authentication

HTTPダイジェスト認証。Basic認証の改良版で、パスワードをハッシュ化して送信。

Digital Signature

デジタル署名。データの完全性と送信者の認証を保証する暗号技術。

E

Encryption

暗号化。データを読めない形式に変換し、機密性を保護する技術。

Entropy

エントロピー。パスワードやトークンのランダム性や予測困難性を表す尺度。

Ephemeral Key

一時鍵。セッションごとに生成され、使用後に破棄される暗号鍵。

F

Factor (Authentication Factor)

認証要素。Something you know(知識)、Something you have(所持)、Something you are(生体)の分類。

Federated Identity

フェデレーテッドアイデンティティ。複数の独立したシステム間でアイデンティティを共有する仕組み。

FIDO (Fast IDentity Online)

パスワードレス認証の標準化を推進する業界団体、およびその規格。

FIDO2

FIDOアライアンスの最新規格。WebAuthnとCTAPで構成される。

Fingerprint (Device/Browser)

デバイスやブラウザの特徴的な情報の組み合わせ。一意識別に使用。

G

Grant Type

OAuth 2.0において、アクセストークンを取得する方法の種類。

Group

グループ。権限管理において、複数のユーザーをまとめて管理する単位。

H

Hash Function

ハッシュ関数。任意長の入力から固定長の出力を生成する一方向関数。

HMAC (Hash-based Message Authentication Code)

ハッシュベースメッセージ認証コード。秘密鍵とハッシュ関数を組み合わせた認証技術。

HOTP (HMAC-based One-Time Password)

HMACベースのワンタイムパスワード。カウンターベースのOTP生成アルゴリズム。

HTTP Basic Authentication

HTTPベーシック認証。最も単純なHTTP認証スキーム。

HTTPS

HTTP over TLS/SSL。暗号化された安全なHTTP通信。

I

Identity

アイデンティティ。システム内でエンティティを一意に識別する属性の集合。

Identity Provider (IdP)

アイデンティティプロバイダー。ユーザーの認証を行い、アイデンティティ情報を提供するシステム。

Implicit Flow

OAuth 2.0の認可フローの一つ。現在は非推奨。

Impersonation

なりすまし。他のユーザーやシステムの身元を偽る行為。

J

JSON Web Token (JWT)

JSON形式で表現される、署名または暗号化されたトークン。

JWE (JSON Web Encryption)

JSONデータを暗号化するための標準。

JWK (JSON Web Key)

暗号鍵をJSON形式で表現する標準。

JWKS (JSON Web Key Set)

複数のJWKを含むJSONドキュメント。

JWS (JSON Web Signature)

JSONデータに署名を付与するための標準。

K

Kerberos

ネットワーク認証プロトコル。チケットベースの認証システム。

Key Derivation Function (KDF)

鍵導出関数。パスワードなどの入力から暗号鍵を生成する関数。

Key Rotation

鍵のローテーション。セキュリティ向上のため定期的に暗号鍵を更新すること。

Keychain

キーチェーン。認証情報を安全に保存・管理するシステム。

L

LDAP (Lightweight Directory Access Protocol)

ディレクトリサービスにアクセスするためのプロトコル。企業の認証システムでよく使用。

Least Privilege

最小権限の原則。タスク実行に必要な最小限の権限のみを付与する原則。

Login

ログイン。システムへの認証を行い、セッションを開始する行為。

Logout

ログアウト。セッションを終了し、認証状態を解除する行為。

M

MAC (Message Authentication Code)

メッセージ認証コード。メッセージの完全性と認証を保証する短い情報。

マジックリンク。パスワードの代わりにメールで送信される一時的な認証リンク。

Man-in-the-Middle Attack (MITM)

中間者攻撃。通信を盗聴・改ざんする攻撃手法。

MFA (Multi-Factor Authentication)

多要素認証。複数の認証要素を組み合わせた認証方式。

Mutual TLS (mTLS)

相互TLS認証。クライアントとサーバーが互いに証明書で認証し合う方式。

N

Nonce

Number used once。リプレイ攻撃を防ぐために使用される一度だけ使用される値。

Non-Repudiation

否認防止。行為を後で否定できないようにする仕組み。

O

OAuth 2.0

認可のための業界標準プロトコル。アクセス委譲のフレームワーク。

OIDC (OpenID Connect)

OAuth 2.0の上に構築された認証レイヤー。

One-Time Password (OTP)

ワンタイムパスワード。一度だけ使用可能なパスワード。

Opaque Token

不透明トークン。内容が暗号化されているか、意味を持たない識別子のみのトークン。

P

PAM (Pluggable Authentication Modules)

プラガブル認証モジュール。Unixシステムの認証フレームワーク。

Passkey

パスキー。FIDO2/WebAuthnベースのパスワードレス認証方式の消費者向け名称。

Password

パスワード。最も一般的な知識ベースの認証要素。

Password Hash

パスワードハッシュ。パスワードを不可逆的に変換した値。

Password Policy

パスワードポリシー。パスワードの複雑性や有効期限に関する規則。

PBAC (Policy-Based Access Control)

ポリシーベースアクセス制御。宣言的なポリシーによってアクセスを制御する方式。

PBKDF2

Password-Based Key Derivation Function 2。パスワードから鍵を導出する標準的な関数。

Phishing

フィッシング。偽のWebサイトやメールで認証情報を盗む攻撃。

PKCE (Proof Key for Code Exchange)

OAuth 2.0の拡張。公開クライアントのセキュリティを向上させる。

PKI (Public Key Infrastructure)

公開鍵基盤。公開鍵暗号を使用したセキュリティインフラ。

Principal

プリンシパル。認証されたエンティティ(ユーザー、サービス、デバイスなど)を表す概念。

Privilege Escalation

権限昇格。通常より高い権限を不正に取得すること。

Q

QR Code Authentication

QRコード認証。QRコードを使用した認証方式。

Quantum-Resistant Cryptography

量子耐性暗号。量子コンピュータでも破れない暗号アルゴリズム。

R

Rainbow Table

レインボーテーブル。ハッシュ値から元のパスワードを逆引きするための事前計算済みテーブル。

Rate Limiting

レート制限。一定時間内のリクエスト数を制限する仕組み。

RBAC (Role-Based Access Control)

ロールベースアクセス制御。役割に基づいて権限を管理する方式。

Realm

レルム。認証や認可の適用範囲を表す領域。

Refresh Token

リフレッシュトークン。新しいアクセストークンを取得するための長期有効なトークン。

Registration

登録。新しいユーザーアカウントを作成するプロセス。

Relying Party (RP)

証明書利用者。OpenID ConnectやSAMLで、IdPからの認証情報を信頼して利用する側。

Replay Attack

リプレイ攻撃。過去の正当な通信を再送信して認証を突破する攻撃。

Resource Owner

リソースオーナー。OAuth 2.0において、保護されたリソースの所有者(通常はエンドユーザー)。

Resource Server

リソースサーバー。OAuth 2.0において、保護されたリソースをホストするサーバー。

Revocation

失効。トークンや証明書を無効化すること。

Risk-Based Authentication

リスクベース認証。アクセスのリスクレベルに応じて認証要件を調整する方式。

Role

ロール。権限管理において、複数の権限をまとめた単位。

Root of Trust

信頼の起点。セキュリティシステムにおいて、他のすべての信頼の基礎となる要素。

Rotation (Key/Secret)

ローテーション。セキュリティ向上のため、鍵や秘密情報を定期的に更新すること。

S

SAML (Security Assertion Markup Language)

セキュリティアサーションマークアップ言語。XMLベースの認証・認可情報交換標準。

Salt

ソルト。パスワードハッシュに追加するランダムなデータ。レインボーテーブル攻撃を防ぐ。

SCIM (System for Cross-domain Identity Management)

クロスドメインアイデンティティ管理システム。ユーザー情報の同期のための標準。

Scope

スコープ。OAuth 2.0において、アクセス権限の範囲を定義する文字列。

Secret

シークレット。認証に使用される秘密情報の総称。

セキュアCookie。HTTPS接続でのみ送信されるCookie。

Security Token

セキュリティトークン。認証や認可の情報を含むデータ構造。

Session

セッション。ログインからログアウトまでの一連のインタラクション。

Session Fixation

セッション固定攻撃。攻撃者が事前に用意したセッションIDを被害者に使用させる攻撃。

Session Hijacking

セッションハイジャック。正当なユーザーのセッションを乗っ取る攻撃。

Session ID

セッションID。セッションを一意に識別する識別子。

SFA (Single Factor Authentication)

単一要素認証。一つの認証要素のみを使用する認証方式。

SHA (Secure Hash Algorithm)

安全なハッシュアルゴリズム。SHA-1、SHA-256などのハッシュ関数ファミリー。

Signature

署名。データの完全性と真正性を保証するための暗号学的な値。

Single Sign-On (SSO)

シングルサインオン。一度の認証で複数のシステムにアクセスできる仕組み。

Single Sign-Out (SLO)

シングルサインアウト。一度のログアウトで複数のシステムからログアウトする仕組み。

SMTP

Simple Mail Transfer Protocol。メール送信プロトコル。パスワードリセット等で使用。

Social Login

ソーシャルログイン。FacebookやGoogleなどのソーシャルメディアアカウントでログインする方式。

SPNEGO

Simple and Protected GSSAPI Negotiation Mechanism。Kerberosベースの認証ネゴシエーション。

SQL Injection

SQLインジェクション。SQLクエリに悪意のあるコードを挿入する攻撃。

SRP (Secure Remote Password)

安全なリモートパスワードプロトコル。パスワードを送信せずに認証を行う方式。

SSL/TLS

Secure Sockets Layer/Transport Layer Security。暗号化通信プロトコル。

State Parameter

OAuth 2.0やOpenID Connectで、CSRF攻撃を防ぐために使用されるパラメータ。

Step-up Authentication

ステップアップ認証。特定の操作時に追加の認証を要求する方式。

Strong Authentication

強力な認証。複数要素や高強度の認証方式を使用した認証。

Subject

サブジェクト。認証や認可の対象となるエンティティ。JWTではsubクレーム。

Symmetric Encryption

対称暗号。暗号化と復号に同じ鍵を使用する暗号方式。

T

TAN (Transaction Authentication Number)

取引認証番号。特定の取引を認証するための一時的な番号。

Tenant

テナント。マルチテナントシステムにおける論理的な分離単位。

サードパーティCookie。訪問しているサイトとは異なるドメインから設定されるCookie。

Threat Model

脅威モデル。システムに対する潜在的な脅威を体系的に分析したもの。

Time-based One-Time Password (TOTP)

時間ベースワンタイムパスワード。現在時刻を基にOTPを生成するアルゴリズム。

TLS (Transport Layer Security)

トランスポート層セキュリティ。SSLの後継となる暗号化通信プロトコル。

Token

トークン。認証や認可の情報を含むデータの塊。

Token Binding

トークンバインディング。トークンを特定のTLS接続に紐付ける技術。

Token Endpoint

トークンエンドポイント。OAuth 2.0でアクセストークンを発行するエンドポイント。

Token Introspection

トークンイントロスペクション。トークンの有効性や詳細情報を確認するプロセス。

Token Revocation

トークン失効。発行済みトークンを無効化すること。

Trust

信頼。セキュリティシステムにおいて、エンティティ間の信頼関係。

Trusted Platform Module (TPM)

信頼できるプラットフォームモジュール。ハードウェアベースのセキュリティチップ。

Two-Factor Authentication (2FA)

二要素認証。2つの異なる認証要素を使用する認証方式。

U

UAF (Universal Authentication Framework)

FIDO仕様の一つ。パスワードレス認証のためのフレームワーク。

User

ユーザー。システムを利用する人間のエンドユーザー。

User Agent

ユーザーエージェント。ユーザーの代理としてサーバーと通信するソフトウェア(ブラウザなど)。

ユーザー同意。データアクセスや処理に対するユーザーからの明示的な許可。

Username

ユーザー名。ユーザーを識別するための一意の文字列。

V

Validation

検証。入力データやトークンが正しい形式や値であることを確認するプロセス。

Vault

ボールト。秘密情報を安全に保管・管理するシステム。

Verification

照合。提供された認証情報が正しいことを確認するプロセス。

Verifiable Credentials

検証可能な資格情報。分散型アイデンティティで使用される、暗号学的に検証可能な属性情報。

W

Web Authentication API (WebAuthn)

W3C標準のブラウザAPIで、公開鍵暗号を使用したパスワードレス認証を実現。

Web Credential

Webクレデンシャル。ブラウザに保存される認証情報。

Whitelist

ホワイトリスト。許可されたエンティティのリスト。

X

X.509

公開鍵証明書の標準フォーマット。

XSS (Cross-Site Scripting)

クロスサイトスクリプティング。悪意のあるスクリプトを注入する攻撃。

Y

Yubikey

ハードウェア認証デバイスの一種。FIDO2、OTP、スマートカードなど複数の認証方式をサポート。

Z

Zero Knowledge Proof

ゼロ知識証明。秘密情報を明かすことなく、その知識を持っていることを証明する暗号学的手法。

Zero Trust

ゼロトラスト。「決して信頼せず、常に検証する」というセキュリティモデル。

Zone

ゾーン。セキュリティ境界で区切られた領域。異なるセキュリティレベルを適用。