しかし、多くのセキュリティ書籍は理論的な説明に終始するか、特定のツールの使い方に特化しており、インフラエンジニアが日常的に直面する「どのように実装すればよいか」という問いに答えていない。本書は、この空白を埋めることを目的としている。

本書の特徴

本書は以下の点で既存の技術書と一線を画している:

概念と実装の架け橋 セキュリティの理論を理解した後、実際にインフラエンジニアがどのように実装するかという実践的なブリッジ部分に焦点を当てている。単なる設定例の羅列ではなく、なぜその設定が必要なのか、どのような判断基準で選択すべきかを丁寧に説明する。

段階的理解の設計 普遍的なセキュリティ原則から始まり、インフラ特有の適用方法、具体的な技術実装、そして統合運用まで、読者の理解を段階的に深めていく構成を採用している。各章は独立して読むこともできるが、通読することでより深い理解が得られるよう設計されている。

実践的価値の重視 読者が実際にセキュリティ実装を成功させることを最重要目標としている。各章には実装時のよくある落とし穴、トラブルシューティングのポイント、運用時の考慮事項が含まれている。

対象読者

本書は以下のような読者を想定している:

  • インフラエンジニア(経験1-5年)で、セキュリティ領域の知識を体系的に身につけたい方
  • ネットワークエンジニア、サーバーエンジニアで、セキュリティ要件への対応が必要な方
  • クラウドエンジニアで、セキュリティ設定の背景にある原理を理解したい方
  • システム管理者で、セキュリティ強化の具体的な手法を学びたい方

前提知識として、基本的なネットワーク知識(TCP/IP、DNS、HTTP)とLinuxの基本操作ができることを想定しているが、必要に応じて基礎的な内容も補足している。

本書の構成

本書は3つのパートから構成されている:

Part I: セキュリティの基礎と原則(第1章〜第3章) セキュリティの基本概念から始まり、インフラエンジニアの視点でセキュリティをどう捉えるか、そして実装計画をどう立てるかを解説する。この部分は、後続の技術実装章の基盤となる重要な概念を扱う。

Part II: 技術実装編(第4章〜第7章) ネットワーク、サーバー、クラウド、コンテナという主要な技術領域ごとに、具体的なセキュリティ実装手法を解説する。各章は独立性を保ちながらも、相互に関連する内容を含んでいる。

Part III: 統合運用編(第8章〜第9章) 個別の技術実装を統合し、継続的にセキュリティを維持・改善していくための監視、自動化、インシデント対応について解説する。実装したセキュリティ対策を持続可能にするための重要な内容を扱う。

本書の読み方

本書は以下のような読み方を推奨する:

初学者の方 第1章から順番に読み進めることを推奨する。各章の冒頭にある「この章で学ぶこと」を確認し、章末の「この章で学んだこと」で理解度を確認しながら進めるとよい。

特定の技術領域に関心がある方 Part IIの該当する章から読み始めることも可能だが、第1章のCIA Triadと第2章の多層防御の概念は、すべての技術章で参照されるため、先に読むことを推奨する。

実装を急ぐ方 各章にある実装例は独立して利用できるが、なぜその実装が必要なのかという背景理解なしに適用すると、環境に適さない設定となる可能性がある。少なくとも各節の導入部分は読むことを推奨する。

本書で使用する記法

本書では以下の記法を使用する:

重要な概念 初出時には太字で表記し、その場で定義を説明する。

コマンド例

# コマンドの実行例
sudo command example

設定例

# 設定ファイルの例
parameter: value

注意事項

注意: セキュリティに関する重要な注意事項はこのように表記する。

参考情報

参考: 追加の情報や関連する内容はこのように表記する。

謝辞

本書の執筆にあたり、多くの方々にご協力いただいた。技術的な内容のレビューをしていただいたセキュリティ専門家の皆様、実装例の検証に協力していただいたエンジニアの皆様、そして執筆を支えてくれた家族に深く感謝する。

また、日々の業務の中で直面した課題と、その解決のために試行錯誤を共にしてきたチームメンバーにも感謝したい。本書の内容の多くは、そうした実践の中から生まれたものである。

フィードバックについて

本書の内容に関するご意見、ご質問、誤りの指摘などは、GitHubリポジトリのIssueまたは著者のメールアドレス(knowledge@itdo.jp)までお寄せいただきたい。技術は日々進化しており、本書も読者のフィードバックを基に継続的に改善していく予定である。

それでは、インフラエンジニアのためのセキュリティ実装の旅を始めよう。