付録E:成果物連鎖の概念マップ

このマップの使い方

このページは章の一覧ではない。読者が「いま作る成果物は、次の誰の、どの判断を可能にするか」を確認するための、テキストベースの概念マップである。JavaScript に依存せず、各セルから章、SOP、テンプレートへ移動できる。

6章は、次の成果物依存でつながる。

第1章 判断
  → 第2章 要求
    → 第3章 設計
      → 第4章 delivery
        → 第5章 合意
          → 第6章 運用
            ↺ 事後記録を第1章の判断と第2章の要求へ戻す

矢印は「前の章を読まないと次へ進めない」という意味ではない。前段の成果物が未確定なら、後段の判断は仮説として扱い、未確定事項、owner、検証条件を残すという意味である。

6章の成果物依存

段階 章と役割 この段階で作る成果物 次へ渡す判断材料 次に読む
1. 判断 第1章:エンジニアの思考 OS 判断メモ、前提・仮説ログ、source hierarchy、検証記録 問い、非目標、根拠の強さ、不確実性、decision owner 第2章の要求境界
2. 要求 第2章:要件定義の認知プロセス requirements briefacceptance criteria、data / permission boundary table 解く問題、自動化境界、失敗時挙動、承認条件 第3章の設計比較
3. 設計 第3章:アーキテクチャ設計の意思決定 AI system ADR、architecture decision matrix、threat model、eval plan 採用理由、control point、品質・コスト・信頼性の予算、rollback 条件 第4章の delivery
4. delivery 第4章:開発/構築フェーズの最適化思考 Issue / Plan、AI 利用記録付き PR、review checklist、release readiness 変更差分、verification cost、残存リスク、リリース可否、handoff 第5章の合意形成
5. 合意 第5章:ステークホルダーマネジメント 1ページ提案メモ、risk register、ROI / TCO / control cost 表、approval log 効果と確認コスト、責任分界、契約・越境・退出条件、意思決定 第6章の運用統制
6. 運用 第6章:危機管理と問題解決 AI incident runbook、severity matrix、incident timeline、postmortem 停止・隔離・復旧の条件、監査証跡、再発防止、次の要求変更 第1章の検証ループ

各成果物の最小手順は AI 協働の標準手順(SOP) に対応する。SOP の10ステップは、Issue 化、情報分類、Plan、入力設計、生成・探索、評価設計、反映、レビュー・承認、リリース・運用、事後記録の順である。

受け渡し条件を読む

判断から要求へ

第1章の判断メモは、AI の回答を採用する文書ではない。問題、非目標、根拠、仮説、検証責任を固定し、第2章が要求境界を決めるための入力にする。根拠が弱い場合は、requirements brief に「未確定」として渡し、精度の断定で穴埋めしない。

要求から設計へ

第2章の acceptance criteria と data / permission boundary table が、第3章の設計比較の制約になる。「AI を使うこと」は要求ではなく、問題を解くために必要な選択肢の一つである。fallback、manual override、rollback が要求に含まれていない場合、設計の安全性を評価できない。

設計から delivery へ

第3章の ADR、threat model、eval plan は、実装者が変更範囲と検証範囲を判断するための契約になる。第4章では、agent に渡せる作業と人が持つ検証責任を分け、PR と release readiness に証跡を残す。

delivery から合意へ

第4章の実装結果は、生成量の報告ではなく、変更差分、verification cost、残存リスク、rollback の実行可能性として第5章へ渡す。第5章は productivity benefit だけでなく、確認・統制・運用のコストを同じ表に載せて意思決定する。

合意から運用へ

第5章の approval、risk acceptance、契約・データ境界・退出条件は、第6章の runbook に運用可能な条件として現れる。合意が「導入する」で止まる場合、停止条件、manual takeover、監査、復旧の責任者が欠落する。

運用から次の判断へ

incident timeline と postmortem は、障害を閉じるだけの記録ではない。どの前提、要求、設計、承認、監視が不十分だったかを判断へ戻し、requirements brief、ADR、runbook、training を更新するための入力である。

役割・目的別のルート

章を順番に読む代わりに、自分が持つ判断と成果物から入口を選べる。どのルートでも、最終判断と説明責任は人間と組織が持つ。

役割 まず解く目的 入口 次に使う成果物
IC / Tech Lead AI 出力を根拠付きの判断と実装差分へ変換する 第1章第4章 判断メモ、PR、verification record
PM / 要件担当 問題・要求・自動化境界を合意可能にする 第2章第5章 requirements brief、acceptance criteria、提案メモ
Architect / Security 構成候補、脅威、権限、評価を設計判断へ落とす 第3章第6章 ADR、threat model、tool approval matrix、runbook
EM / 経営・法務窓口 効果、確認コスト、契約、責任分界を説明する 第5章SOP risk register、ROI / TCO / control cost、approval log
SRE / DevOps / Security 運用 逸脱を止め、隔離し、復旧し、再発防止を追跡する 第6章第1章 severity matrix、incident timeline、postmortem
全ロール 用語と図版から必要な章へジャンプする 付録F:用語集付録G:図表索引 用語の定義、図版の用途、関連章

迷ったときの最小ルート

  1. SOP の Issue 化 で、目的、利用者、判断点、成功条件を書く。
  2. 第1章の source hierarchy で、根拠と不確実性を分ける。
  3. 第2章の要求境界 で、データ、権限、失敗時挙動を決める。
  4. 第3章の ADR第4章の検証責任 で、実装・評価・承認を接続する。
  5. 第5章の合意形成第6章の運用統制 で、導入後の責任分界と停止条件を残す。

このルートで使う用語は 付録F:用語集、本文中の図版を探す場合は 付録G:図表索引 を参照する。