用語集(Glossary)
本書で用いる用語・訳語の単一の真実(SSOT)です。章側で表記が揺れる場合は、本ファイルに合わせて修正します。
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- 用語の定義を確認する: 本ページ
- 図版・チェックリスト・症状別の戻り先を確認する: 付録D: クイックリファレンス
- 設計成果物の雛形を再利用する: 付録A: 設計成果物テンプレ集
- AI への渡し方を再利用する: 付録B: AIエージェント用プロンプト集
A
Approval(承認)
改修前後の出力やレビュー結果を、目視または承認済みベースラインで比較する確認方法。本書では Approval test やレビュー承認の判断点を含む実務語として扱います。
本書での使い方: 差分レビューやゴールデンテストの文脈で、「期待する出力を承認済みの基準として固定する」観点を指す。
Associativity(結合律)
h ∘ (g ∘ f) = (h ∘ g) ∘ f が成り立つ性質。合成の括弧の付け替えで意味が変わらないことを保証します。
本書での使い方: パイプライン分割やリファクタで処理段階を組み替えても、契約の意味を保てる条件として参照する。
Adjunction(随伴)
2つの構成のあいだに成り立つ「最良の対応」を表す関係。本書では厳密な証明よりも、仕様と実装(あるいは抽象と具体)の対応を設計判断として扱う直観を重視します。
本書での使い方: 仕様→設計→実装の写像で、過不足(情報の落ち/過剰)を議論する枠組みとして参照する。
Audit(監査)
重要操作の追跡可能性(監査証跡)。誰が・いつ・何を・どの対象へ行ったか、改竄検知のためのハッシュ等を含めて契約として固定します。
本書での使い方: Morphisms の Post 条件や Diagrams(監査整合)として明文化し、AI生成物の逸脱(監査の任意化)を検知する。
C
Compatibility(互換性)
旧版/新版、統合前/統合後のあいだで、観測可能な結果や契約が一致すること。本書では API、データ、監査、レビュー運用まで含む広い実務語として使います。
本書での使い方: Pushout や自然変換の章で、差分/移行が破壊的変更になっていないかを判断する観点として扱う。
Context Pack
AIエージェントへ引き渡す入力契約です。 最低限、Problem statement / Glossary / Objects / Morphisms / Diagrams を含みます。 加えて、Constraints / Acceptance tests を含みます。 Coding conventions / Forbidden changes も含みます(Context Pack v1 仕様)。
本書での使い方: SSOT として扱い、Issue→PR→CI の差分レビューと検証の基準を固定する。
Coproduct(余積)
複数の可能性を「どれか1つ」として表す構造(OR)。成功/失敗、エラーvariant、分岐の表現に対応します。
本書での使い方: 出力(Success/Error)や failures(エラーvariant)を余積として固定し、テスト観点(variantごとのケース)を自動的に得る。
D
Diagram(図式)
対象と射の関係で表される要件・不変条件。ソフトウェア設計では「検証可能な形(テスト観点/受入条件)」へ落とす。
本書での使い方: 不変条件を verification(テスト観点)へ変換し、AI生成差分を性質ベースでレビューする。
DoD(Definition of Done)
完了条件。受入テスト(Acceptance tests)と図式(Diagrams)を中心に、変更が満たすべき品質ゲートを明文化します。
本書での使い方: Context Pack の acceptance_tests と Diagrams をDoDとして扱い、CIで破綻を機械検知する。
E
Effect boundary(効果境界)
副作用(DB/外部API/例外/再試行/監査等)を閉じ込める境界。pure core(純粋)と impure shell(効果)を分離し、合成・検証を破綻させないための設計原則です。
本書での使い方: 効果を勝手に増やす変更を Forbidden changes として抑止し、冪等・監査等の性質をテスト戦略へ接続する。
F
Functor(関手)
構造を保った写像。本書では「仕様→設計→実装」の写像として利用する。
本書での使い方: 境界(Objects)と操作(Morphisms)の対応が壊れていないかを、レビュー観点(関手性)として扱う。
I
Identity(恒等射)
合成において何も変えない基準の射。任意の f: A → B に対して、f ∘ id_A = f かつ id_B ∘ f = f を満たします。
本書での使い方: パイプラインの形を揃えたり、条件付きの分岐を共通形で扱ったりするときの基準として参照する。
Idempotency(冪等性)
同一入力を複数回適用しても、観測可能な結果(状態/イベント/監査等)が1回と同等に収束する性質。
本書での使い方: Diagrams(冪等)として固定し、再試行・重複実行の破綻をテストで検知する。
IdP(Identity Provider)
認証主体を発行・証明する外部の認証基盤。SSO や複数認証源の統合では、複数の IdP が同じ主体を表すことがあります。
本書での使い方: Pullback による認証統合で、複数の IdP が発行した subject を共通の Principal へ写して整合を取る文脈で使う。
Impure shell(効果を持つ外側)
DB、外部 API、監査、再試行などの副作用を引き受ける境界。pure core の判断結果を受けて、実世界への書き込みや通信をします。
本書での使い方: 効果境界を明示し、監査や冪等性をどこで観測・検証するかを固定するための語彙として使う。
K
Kleisli(クライスリ)
効果付き計算(例: A → M B)を合成可能にするための枠組み(クライスリ圏/クライスリ射)。
本書での使い方: 効果境界を「合成規則」として固定し、例外・再試行・監査の暗黙混入を抑止する。
M
Merge gate(合流ゲート)
並列に進めた成果物を合流させるときに通す品質判定点。Lint、テスト、レビュー、CI をまとめて「次工程へ渡してよいか」を決める境界です。
本書での使い方: モノイダル圏/ストリング図式の章で、並列作業の合流点と品質ゲートを同じ設計単位として扱う。
Minimal lint(簡易検証)
Context Pack の必須キー/型、ID重複、参照整合など、運用上の破綻を早期に検知する軽量チェック。本書では scripts/validate-context-pack.py を指す。
本書での使い方: Context Pack を更新したら必ず実行し、PR作成前に破綻を潰す。
Morphism(射)
対象間の写像。ソフトウェア設計では操作/API/変換として表現し、Pre/Post・失敗条件を持つ。
本書での使い方: Pre/Post/failures を入力契約として固定し、AIが勝手に仕様を補完・改変しないようにする。
Monad(モナド)
効果(IO/DB/例外/再試行等)を型に押し上げ、合成規則を明示する枠組み。
本書での使い方: pure core / impure shell を維持するための語彙として用い、効果の扱いを契約・検証へ接続する。
Monoidal category(モノイダル圏)
並列合成(並べて処理する)と直列合成を同時に扱うための構造。本書では厳密な公理よりも設計上の直観を優先します。
本書での使い方: 分業・並列処理・配線(結合点)を図式化し、統合時の破綻点を明確化する。
N
Natural transformation(自然変換)
2つの関手のあいだの「対応(対象ごとの成分)」で、操作との整合(可換条件)を要求するもの。
本書での使い方: リファクタ/差分を意味保存として扱い、Before/After と可換チェック(テスト観点)をセットでレビューする。
O
Object(対象)
本書の基本単位。ソフトウェア設計では型/状態/権限/エラーを含む「設計上の対象」として扱う。
本書での使い方: 境界(責務/権限/データ)を固定し、章を跨いだ用語と設計単位の揺れを抑える。
P
Principal(主体)
認証・認可の文脈で「誰として扱うか」を表す主体。複数の IdP やアカウント表現を統合するときの共通表現として使います。
本書での使い方: Pullback による認証統合で、複数の subject を同一主体へ写して整合を取る対象として参照する。
Pure core(純粋な中核)
状態判定や計算だけを担い、副作用を持たない判断層。入力から出力への対応を、テストしやすい形で固定します。
本書での使い方: impure shell と分離して、どの判断を契約・図式・テスト観点として安定化させるかを示す。
Product(積)
複数の要素を「すべて揃った1つ」として表す構造(AND)。入力の必須情報の束に対応します。
本書での使い方: 入力を積(必須情報のみ)として固定し、万能DTO化(optional濫用)を抑止する。
Pullback(プルバック)
2つの写像の整合を取るための構造。本書では「統合点(整合条件)」を図式として扱う直観を重視します。
本書での使い方: データ統合・ID対応・参照整合の要件を図式化し、結合条件の破綻を検証可能にする。
Pushout(プッシュアウト)
差分を吸収して統合するための構造。本書では移行・統合の“貼り合わせ”を図式として扱います。
本書での使い方: 旧/新の境界・互換層・移行手順を図式化し、破壊的変更を差分とテストへ落とす。
S
Schema validation(スキーマ検証)
JSON Schema に基づき、Context Pack が Context Pack v1 仕様に準拠していることを検証する。本書では scripts/validate-context-pack-schema.py を指す。
本書での使い方: minimal lint と併用し、CIで仕様ドリフトを機械検知する。
SSOT(Single Source of Truth)
単一の真実の所在。仕様・用語・検証条件を、参照先がぶれない形で固定します。
本書での使い方: Context Pack を SSOT として運用し、AI生成物の差分レビューとCI検証の基準を統一する。
String diagram(ストリング図式)
処理(射)の接続と並列合成を、配線として表す図式表現。
本書での使い方: 分業・統合の接続点を可視化し、どこで壊れるか(境界/合流点)をレビュー可能にする。
U
Union(ユニオン)
複数の候補のうちどれか1つを取り得る型や契約表現。文脈に応じて識別子付き union、sum type、余積の実装上の言い方として使います。
本書での使い方: 余積(coproduct)の実装レベルの言い換えとして用い、成功/失敗や variant 列挙を契約に落とすときの語彙にする。
Universality / Universal property(普遍性)
「標準形」を特徴付ける性質。詳細な実装に依存せず、比較・置換が可能になる形を与えます。
本書での使い方: 契約(入力/出力/エラー)を積/余積として正規化し、テスト観点と禁止事項を標準化する。