第7章:AI活用の具体的場面
学習目標
この章を読み終えると、以下のことができるようになります:
- 資料作成でAIを効果的に活用する
- 企画立案プロセスでAIと協働する
- 会議準備とファシリテーションにAIを活用する
- 顧客対応でAIを適切に応用する
- データ分析とレポート作成でAIを活用する
7.1 資料作成での活用法
7.1.1 資料作成プロセスとAIの役割
従来の資料作成プロセス
- 企画・構成検討(2時間)
- 情報収集・整理(3時間)
- 文章作成(4時間)
- デザイン・レイアウト(2時間)
- 校正・修正(1時間)
AI活用後のプロセス
- 企画・構成検討(AIと協働、1時間)
- 情報収集・整理(AI支援、1時間)
- 文章作成(AI生成+修正、1.5時間)
- デザイン・レイアウト(従来通り、2時間)
- 校正・修正(AI支援、30分)
7.1.2 企画・構成段階でのAI活用
構成案の生成プロンプト
【役割】経験豊富なビジネスライターとして
【背景】部長級の経営陣向けに、新事業提案のプレゼンテーション資料を作成
【指示】以下の条件で資料構成を提案してください:
- 目的:新規事業への投資判断を得る
- 時間:15分のプレゼン + 5分の質疑
- ページ数:10-15ページ
- 重視すべき要素:収益性、実現可能性、リスク対策
【成果物】章立てと各章の要点、想定ページ数
期待される回答例
【提案構成】
1. エグゼクティブサマリー(1ページ)
2. 市場機会の分析(2-3ページ)
3. 事業コンセプト(2ページ)
4. 競合分析と差別化戦略(2ページ)
5. 収益計画とKPI(2-3ページ)
6. 実行計画とマイルストーン(2ページ)
7. リスク分析と対策(1-2ページ)
8. 投資計画と期待リターン(1ページ)
9. 次のアクション(1ページ)
各章のポイント:
- 2章:TAM/SAM/SOM分析、成長性データ
- 4章:競合比較表、SWOT分析
- 5章:3年間の損益予測、ブレークイーブン
7.1.3 情報収集・整理段階でのAI活用
情報収集の効率化
【指示】新規事業「高齢者向けデジタルサービス」について、
以下の観点から必要な情報を整理してください:
1. 市場規模と成長性
2. 主要なプレイヤーと競合状況
3. 顧客ニーズとペインポイント
4. 技術トレンドと必要な機能
5. 規制や法的要件
各項目について、調査すべき情報源と収集方法も併せて提案してください。
情報の構造化
【指示】収集した市場データを以下の形式で整理してください:
| 項目 | データ | 出典 | 信頼性 | 最新性 |
|------|--------|------|--------|--------|
| 市場規模 | ○○億円 | △△調査 | A | 2024年 |
データの分析結果として:
- 3つの主要なトレンド
- 2つの重要な課題
- 1つの最大の機会
を特定してください。
7.1.4 文章作成段階でのAI活用
ドラフト作成の効率化
【指示】以下の構成に従って、新事業提案書の「市場機会の分析」章を作成してください:
【構成】
1. 市場規模とポテンシャル
2. 成長ドライバー
3. ターゲット顧客の特性
4. 現在の課題と解決の必要性
【条件】
- 読み手:経営陣(非専門家)
- 文体:簡潔で説得力のある表現
- 長さ:A4で2ページ程度
- データ:提供したデータを根拠として活用
- 構成:見出し、本文、図表の組み合わせ
スタイル統一の支援
【指示】以下の文章を、ビジネス提案書として適切なスタイルに統一してください:
【修正前】
「この市場はマジで伸びてます。競合もそんなにいないし、チャンスだと思います。」
【修正条件】
- 専門的で信頼感のある表現
- 根拠に基づいた客観的な記述
- 経営陣に適した敬語レベル
- 具体的な数値や事実を重視
7.1.5 品質向上と効率化のコツ
段階的な品質向上
- 第1段階: 構成とポイントの確認
- 第2段階: 論理構成と根拠の強化
- 第3段階: 表現とスタイルの調整
- 第4段階: 最終チェックと微調整
効率化のポイント
- テンプレート化:よく使う資料構成のパターン化
- データベース化:業界データ・競合情報の蓄積
- 品質基準の明確化:社内で求められる品質レベル
- フィードバックループ:使用結果の振り返りと改善
7.2 企画立案での使い方
7.2.1 企画立案プロセスとAIの活用ポイント
企画立案の6段階
- 課題発見: 解決すべき問題の特定
- 情報収集: 市場・顧客・競合の調査
- アイデア創出: 解決策の発想と選択肢の拡大
- 企画設計: 具体的な実行計画の策定
- 検証・評価: 実現可能性とリスクの評価
- 提案・承認: ステークホルダーへの提案
各段階でのAI活用度
- 課題発見: 30% (人間の洞察が重要)
- 情報収集: 80% (AIの情報処理能力を活用)
- アイデア創出: 70% (AIとの協働で創造性向上)
- 企画設計: 60% (構造化・体系化をAIが支援)
- 検証・評価: 50% (分析はAI、判断は人間)
- 提案・承認: 40% (人間のコミュニケーション力が重要)
7.2.2 課題発見段階でのAI活用
課題の構造化支援
【指示】以下の状況について、潜在的な課題を構造化して分析してください:
【状況】
- 売上が前年同期比10%減少
- 顧客満足度調査で「価格が高い」との意見が多数
- 競合他社が低価格商品を投入
- 社内からは「品質を下げるべきではない」との声
【分析方法】
1. ロジックツリーで課題を分解
2. 緊急度×重要度で優先順位付け
3. 短期・中期・長期の時間軸で整理
4. 解決可能性の評価
【成果物】課題マップと優先課題の特定
多角的視点での課題発見
【指示】当社の新商品開発について、以下の視点から潜在課題を洗い出してください:
【視点】
1. 顧客視点:満たされていないニーズは何か
2. 競合視点:競合の弱点・隙間はどこか
3. 技術視点:活用できる新技術はあるか
4. 市場視点:成長セグメントはどこか
5. 社内視点:未活用の強み・資源はあるか
各視点から3つずつ課題を特定し、解決の緊急度を評価してください。
7.2.3 アイデア創出段階でのAI活用
ブレインストーミング支援
【指示】「リモートワーク環境での社員エンゲージメント向上」について、
以下の制約の中でアイデアを20個以上生成してください:
【制約条件】
- 予算:年間500万円以内
- 対象:従業員200名
- 期間:半年以内に効果を実感
- 既存システム:Teams、Slack使用中
【アイデア生成の観点】
1. コミュニケーション促進
2. 評価・報酬制度
3. 学習・成長機会
4. ワークライフバランス
5. 帰属意識・企業文化
各アイデアに実現難易度(1-5段階)と期待効果(1-5段階)を付けてください。
他業界事例の応用
【指示】飲食業界の「顧客リピート率向上」の成功事例を調査し、
IT業界のBtoBサービスに応用可能なアイデアを提案してください。
【調査方法】
1. 飲食業界の成功事例3-5個を分析
2. 成功要因を抽象化・一般化
3. IT業界の特性に合わせて具体化
4. 実現可能性と効果を評価
【成果物】
- 元の事例の概要
- 成功要因の分析
- IT業界への応用案
- 実行計画の概要
7.2.4 企画設計段階でのAI活用
実行計画の構造化
【指示】選定されたアイデア「社内メンター制度の導入」について、
以下の項目を含む詳細な実行計画を策定してください:
【必須項目】
1. 目的・目標設定(定量・定性)
2. 対象者・適用範囲
3. 実施スケジュール(フェーズ分け)
4. 必要リソース(人・金・時間)
5. 体制・役割分担
6. リスクと対策
7. 効果測定方法
8. 成功要因と前提条件
【制約】
- 導入期間:6ヶ月
- 予算:300万円以内
- 人員:既存メンバーでの運用
収益・効果の予測
【指示】新サービス「AI活用コンサルティング」の事業計画を作成してください:
【前提条件】
- サービス価格:月額50万円/社
- 初期コスト:1,000万円
- 運営コスト:月額200万円
- 市場規模:潜在顧客1,000社
【分析項目】
1. 3年間の売上予測(保守的・楽観的シナリオ)
2. 損益分岐点の算出
3. 投資回収期間
4. 感度分析(価格・コスト・顧客数の変動影響)
5. KPI設定と測定方法
【成果物】Excel形式の事業計画書とグラフ
7.3 会議準備とファシリテーション
7.3.1 事前準備でのAI活用
アジェンダ作成支援
【指示】以下の会議のアジェンダを作成してください:
【会議概要】
- 名称:四半期業績レビューと来期計画検討会議
- 参加者:部長3名、課長5名、担当者2名
- 時間:2時間
- 目的:業績評価と来期戦略の方向性決定
【アジェンダ要件】
1. 各議題の所要時間を明記
2. 事前準備が必要な項目を指定
3. 決定事項と検討事項を明確に区別
4. 参加者の役割を明示
【成果物】
- 詳細アジェンダ
- 事前準備チェックリスト
- 会議運営の注意点
資料準備の効率化
【指示】業績レビュー会議用の資料を以下の項目で作成してください:
【資料内容】
1. 四半期実績サマリー(対目標・前年比較)
2. 主要KPIの推移とトレンド分析
3. 好調・不調要因の分析
4. 競合動向と市場環境の変化
5. 来期に向けた課題と機会
6. 検討すべき戦略オプション
【形式】
- A4資料で8-10ページ
- 見やすいグラフ・表を多用
- 要点を3行以内でまとめ
- 意思決定に必要な情報を網羅
7.3.2 会議進行でのAI活用
リアルタイム議事録作成
【指示】以下の会議発言を、構造化された議事録形式で整理してください:
【発言内容】
「売上は目標を下回ったが、新規顧客獲得は順調。マーケティング費用の効果が
見えにくい。来期はもう少し効率的な方法を検討したい...」
【議事録形式】
1. 発言者と発言概要
2. 主要なポイント(事実・意見・提案)
3. 決定事項・合意事項
4. 課題・検討事項
5. アクションアイテム(担当者・期限)
【要件】
- 客観的で正確な記録
- 後で検索しやすい構造
- 要点を見つけやすい形式
論点整理とファシリテーション支援
【指示】会議で複数の意見が出ている状況を整理してください:
【状況】
- A課長:「価格を下げるべき」
- B課長:「品質向上に投資すべき」
- C課長:「新機能を追加すべき」
- 部長:「コストは抑えたい」
【整理方法】
1. 各意見の根拠と期待効果を明確化
2. 共通点と相違点を特定
3. 論点を構造化(短期・長期、コスト・収益等)
4. 合意形成のための選択肢を提示
5. 次の検討ステップを提案
【成果物】論点整理表と推奨アクション
7.3.3 会議後のフォローアップ
アクションアイテムの管理
【指示】会議で決定された以下の事項を、実行可能なアクションプランに変換してください:
【決定事項】
「来月までに競合分析を実施し、価格戦略を再検討する」
【変換要件】
1. 具体的なタスクに分解
2. 担当者と期限を明確化
3. 必要なリソースを特定
4. 進捗確認のマイルストーンを設定
5. 成果物の品質基準を定義
【成果物】
- アクションプランシート
- 進捗管理用のガントチャート
- 次回会議での確認項目
7.4 顧客対応での応用
7.4.1 顧客コミュニケーションの質向上
メール対応の改善
【指示】以下の顧客からの問い合わせに対する返信メールを作成してください:
【問い合わせ内容】
「先日購入した商品に不具合があります。返品・交換は可能でしょうか?
また、同様の問題は他にも発生していますか?」
【返信条件】
1. 誠意ある対応で信頼関係を維持
2. 具体的な解決策を提示
3. 今後の予防策も含める
4. 追加購入につながる関係性構築
5. 社内エスカレーションの必要性判断
【成果物】完成した返信メール文
提案書のカスタマイズ
【指示】標準的な提案書を、以下の顧客特性に合わせてカスタマイズしてください:
【顧客特性】
- 業界:製造業(従業員500名)
- 課題:業務効率化とコスト削減
- 意思決定者:保守的、ROI重視
- 予算:年間1,000万円程度
- 導入時期:来年4月希望
【カスタマイズ項目】
1. 業界特有の課題と解決策
2. 同業他社の導入事例
3. 定量的な効果予測
4. 段階的導入プランの提示
5. リスク軽減策の説明
【成果物】カスタマイズされた提案書
7.4.2 顧客ニーズの深掘り
ヒアリング質問の設計
【指示】新規顧客との初回商談で使用する、効果的なヒアリング質問集を作成してください:
【商談目的】
- 顧客の真のニーズ発見
- 予算・時期・決裁者の確認
- 競合状況の把握
- 提案の方向性決定
【質問設計の原則】
1. オープンクエスチョンから開始
2. 段階的に詳細を深掘り
3. 数値化できる質問を含める
4. 感情的な側面も探る
5. 次のアクションにつなげる
【成果物】
- 商談フロー(時系列)
- 質問リスト(優先度付き)
- 想定回答と追加質問
- NGワード・注意点
7.4.3 顧客満足度の向上
フォローアップの自動化
【指示】顧客満足度向上のためのフォローアップスケジュールを設計してください:
【対象】サービス導入後の顧客
【期間】導入から1年間
【目的】定着支援・満足度向上・アップセル機会創出
【フォローアップ設計】
1. タイミング(導入後1週間、1ヶ月、3ヶ月...)
2. コンタクト方法(電話、メール、訪問)
3. 確認内容(使用状況、課題、満足度)
4. 提供サポート(マニュアル、研修、相談)
5. アップセル・クロスセル機会の見極め
【成果物】
- フォローアップカレンダー
- 各タイミングでの確認項目
- 課題発見時の対応フロー
7.5 データ分析とレポート作成
7.5.1 データ分析の効率化
分析方針の策定
【指示】売上データの分析について、以下の目的に応じた分析方針を策定してください:
【目的】来期の売上予測と戦略立案
【データ】過去3年間の月次売上データ(商品別・地域別・顧客別)
【制約】分析期間は2週間、経営陣への報告が必要
【分析方針】
1. 分析の優先順位と時間配分
2. 使用する分析手法と理由
3. 可視化の方法と形式
4. 必要な追加データの特定
5. 分析結果の検証方法
【成果物】分析計画書とスケジュール
データの可視化設計
【指示】顧客行動分析の結果を、経営陣向けに効果的に可視化してください:
【分析結果】
- 新規顧客の50%は3ヶ月以内に離脱
- 継続顧客の平均購入額は年々増加
- 特定商品カテゴリーでリピート率が高い
- 地域による購入パターンの違いが明確
【可視化要件】
1. 一目で要点が理解できる
2. データの信頼性が確認できる
3. アクションにつながる示唆がある
4. 複数の関係性が理解できる
5. 詳細データにもアクセス可能
【成果物】グラフ・表・ダッシュボード設計
7.5.2 レポート作成の品質向上
エグゼクティブサマリーの作成
【指示】以下の詳細分析結果から、経営陣向けのエグゼクティブサマリーを作成してください:
【分析結果】(詳細データ省略)
- 売上は計画比95%、前年同期比102%
- 新商品Aが好調、既存商品Bは苦戦
- オンライン売上が30%増加
- 人件費の上昇が利益を圧迫
【サマリー要件】
1. A4で1ページ以内
2. 重要な数値を3つに絞る
3. 経営判断に必要な情報を優先
4. 次のアクションを明示
5. リスクと機会を併記
【成果物】エグゼクティブサマリー
レポートの構造化
【指示】月次業績レポートの標準フォーマットを設計してください:
【要件】
- 読み手:部長級以上
- 時間:5分で要点把握
- 内容:業績・課題・対策・予測
- 形式:A4で5ページ以内
【構成要素】
1. サマリー(数値・トレンド・重要事項)
2. 詳細分析(好調・不調要因)
3. 競合・市場動向
4. 課題と対策
5. 来月の予測と注意点
【成果物】
- レポートテンプレート
- 各セクションの記載基準
- データ収集・更新フロー
章末演習
演習7-1:資料作成の実践
あなたの職場で実際に必要な資料(企画書、報告書、提案書等)を1つ選び、AIを活用して効率的に作成してください。作成プロセスと時間短縮効果を記録してください。
演習7-2:企画立案プロセスの設計
現在抱えている課題を1つ選び、AIを活用した企画立案プロセスを実際に実行してください。各段階でのAI活用方法と人間の判断ポイントを整理してください。
演習7-3:会議運営の改善
次回参加予定の会議について、事前準備から事後フォローまでのAI活用計画を立案し、実際に適用してください。
演習7-4:顧客対応の質向上
実際の顧客とのやり取り(メール、提案書、商談等)で、AIを活用して対応品質を向上させてください。改善前後の比較を行ってください。
演習7-5:データ分析の効率化
業務で扱っているデータを1つ選び、AIを活用して分析・レポート作成を効率化してください。従来の方法との違いを評価してください。
理解度チェック
□ 資料作成の各段階でAIを効果的に活用できる □ 企画立案プロセスでAIと人間の役割分担ができる □ 会議の準備・進行・フォローでAIを活用できる □ 顧客対応の質向上にAIを適用できる □ データ分析とレポート作成でAIを効率的に使える □ 各場面での注意点とリスクを理解している
次章への橋渡し
この章では、具体的な業務場面でのAI活用方法を学びました。次の第9章では、AIを使う上で重要なリスク管理と倫理的配慮について学びます。安全で責任あるAI活用のために必要な知識を身につけ、企業コンプライアンスとも整合した使い方を習得しましょう。