はじめに
本書『ITインフラストラクチャ技術ガイド - ネットワークとサーバーシステムの設計と実装』は、ベンダー非依存の観点からインフラストラクチャ技術の本質的な設計原理と実装手法を体系化した技術書です。
本書の目的
現在のITインフラ技術学習環境では、以下のような課題があります:
- 特定製品の操作方法に終始し、技術の本質的理解が不足している
- 個別技術要素の学習に留まり、システム全体の設計判断力が育たない
- 技術選択の根拠を説明できず、トレードオフを考慮した意思決定ができない
本書はこれらの課題を解決し、どのような環境でも応用可能な普遍的な技術理解を提供します。
本書の構成
本書は4部構成、全13章で以下のように構成されています:
第1部:ネットワーク基盤技術(第1章〜第5章)
- 第1章:プロトコルスタック - ネットワーク通信の階層モデルと各層の役割
- 第2章:レイヤー2ネットワーク - データリンク層の技術とスイッチング
- 第3章:レイヤー3ネットワーク - ネットワーク層とルーティング技術
- 第4章:名前解決 - DNS システムとその設計原理
- 第5章:トランスポート層 - TCP/UDP とコネクション管理
第2部:サーバーシステム技術(第6章〜第9章)
- 第6章:OS内部構造 - オペレーティングシステムの基本機能
- 第7章:ストレージ - データ保存技術とファイルシステム
- 第8章:仮想化 - 仮想化技術とコンテナ
- 第9章:自動化 - Infrastructure as Code と運用自動化
第3部:運用と信頼性(第10章〜第11章)
- 第10章:セキュリティ - インフラセキュリティの設計原則
- 第11章:高可用性 - 障害対策とシステム冗長性
第4部:総合設計(第12章〜第13章)
- 第12章:エンドツーエンドシステム設計 - 統合的システム設計手法
- 第13章:技術選択フレームワーク - 技術選択の判断基準と手法
対象読者
本書は以下の方を対象としています:
- インフラストラクチャ設計・構築に従事するエンジニア - 既存知識を体系化し、設計力を向上させたい方
- システムアーキテクチャの理解を深めたい技術者 - 技術の本質的理解を求める方
- 技術選択の判断基準を体系化したいアーキテクト - 説明可能な技術選択を行いたい方
前提知識
本書を効果的に活用するために、以下の基礎知識があることを前提としています:
想定する技術レベル
ネットワーク分野:
- TCP/IPの基本概念(OSI参照モデル、IPアドレス、サブネットマスクを理解)
- 基本的なルーティング・スイッチングの概念
- HTTPやDNSなど主要プロトコルの基本動作
システム運用分野:
- コマンドライン操作(基本的なLinux/Windowsコマンドを実行できる)
- プロセス、メモリ、ストレージなどシステムリソースの概念
- 基本的なサーバー運用経験
プログラミング分野:
- 変数、関数、制御構文を理解し、コードを読解できる
- 設定ファイルの記述やスクリプトの理解が可能
- 特定言語への深い知識は不要
各章の到達目標
各章を学習することで、以下のようなスキルが段階的に身につきます:
- 第1-4章: プロトコル・ネットワーク技術の設計思想を理解し、パフォーマンス問題の原因を特定できる
- 第5-8章: システム・ストレージの内部動作を理解し、最適化手法を選択できる
- 第9-11章: 運用自動化・高可用性システムを設計し、障害対応を体系的に実施できる
- 第12-13章: 統合的なシステム設計判断と技術選択を論理的根拠をもって実行できる
本書の特徴
ベンダー中立の観点
特定ベンダーの製品に依存しない普遍的な技術原理を重視しています。オープンソース技術を中心とした実装例により、実際に試しながら学習できます。
設計思想への焦点
実装詳細よりも「なぜそう設計されたか」を重視し、技術の背後にある思想と制約を理解できるよう構成しています。
クロスレイヤー視点
各技術要素を独立して扱うのではなく、レイヤー間の相互作用を明確に解説し、システム全体の最適化手法を提示します。
本書の活用方法
- 通読する場合:第1章から順番に読み進めることで、体系的な理解が得られます
- 特定分野を学習する場合:必要な部分を参照し、関連章も併せて読むことを推奨します
- 実践的活用:各章の実装例を実際に試し、理解を深めてください
それでは、第1章「プロトコルスタック」から始めましょう。