付録A: 用語集

本書で使用される主要な技術用語を五十音順・アルファベット順で整理しています。

A

APNIC(Asia-Pacific Network Information Centre)

アジア太平洋地域のIPアドレス管理を行う地域インターネットレジストリ。IPv4アドレス枯渇の進行状況において重要な役割を果たす。

ARIN(American Registry for Internet Numbers)

北米地域のIPアドレス管理を行う地域インターネットレジストリ。2015年にIPv4アドレスが枯渇した。

ARPANET

インターネットの前身となったネットワーク。TCP/IPプロトコルの実証実験で使用され、その実績がTCP/IPの普及につながった。

AS(Autonomous System)

自律システム。単一の管理下にあり、統一されたルーティングポリシーを持つネットワーク群。BGPでの経路制御の基本単位。

B

BGP(Border Gateway Protocol)

自律システム間のルーティングプロトコル。インターネット全体のルーティングを制御し、政策的・経済的判断に基づいて経路を選択する。

BGPコミュニティ

BGPで経路にメタ情報を付与する仕組み。経路の分類や制御に使用される。

C

CGN(Carrier Grade NAT)

通信事業者レベルのNAT。IPv4アドレス枯渇への対策として、多数の顧客を少数のパブリックIPアドレスで共有させる技術。

CIDR(Classless Inter-Domain Routing)

クラスレス・ドメイン間ルーティング。従来のクラスフルアドレッシングに代わる、可変長サブネットマスクを使用したアドレス管理方式。

CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)

Ethernetで使用されるアクセス制御方式。送信前のキャリアセンス、衝突検出、指数バックオフにより分散制御を実現。現在のスイッチ環境では使用されない。

クラスフルアドレッシング

初期のIPアドレス体系。アドレスをクラスA、B、Cに分類して固定長で管理していたが、アドレス浪費の問題があった。

クロスレイヤー最適化

プロトコルスタックの層間で情報を共有し、全体のパフォーマンスを向上させる手法。理想的な階層分離に対するトレードオフとなる。

D

DMA(Direct Memory Access)

CPUを介さずにメモリと周辺機器間でデータ転送を行う機能。ネットワーク処理のパフォーマンス向上に寄与する。

デュアルスタック

IPv4とIPv6の両方を同時に運用する技術。IPv6移行期における現実的なアプローチ。

E

Ethernet

IEEE 802.3で標準化されたLAN技術。CSMA/CDから全二重スイッチングへ進化し、現在のLANの事実上の標準となっている。

Ethernetフレーム

Ethernetで使用されるデータフレーム形式。プリアンブル、MACアドレス、タイプ/長さ、ペイロード、FCSで構成される。

F

Fast Ethernet

100BASE-TX規格による100MbpsのEthernet。FDDIに対抗してEthernetの高速化を実現した。

FCS(Frame Check Sequence)

Ethernetフレームの末尾に付加される4バイトのエラー検出コード。フレームの整合性チェックに使用される。

FDDI(Fiber Distributed Data Interface)

光ファイバーを使用した100MbpsのLAN技術。二重リング構造による冗長性を持つが、高コストによりEthernetに敗れた。

G

Gigabit Ethernet

1000BASE-T規格による1GbpsのEthernet。現在の企業LANで広く使用される。

I

IANA(Internet Assigned Numbers Authority)

インターネット番号割り当て機関。IPアドレスやドメイン名の最上位管理を行う。2011年にIPv4中央在庫が枯渇した。

ICE(Interactive Connectivity Establishment)

NAT環境での直接通信を実現するプロトコル。STUN、TURN、直接接続を組み合わせて最適な通信経路を選択する。

IGP(Interior Gateway Protocol)

自律システム内部で使用されるルーティングプロトコル。OSPFやRIPなどが含まれる。

IPv4

現在広く使用されているインターネットプロトコルバージョン4。32ビットアドレス空間を持つがアドレス枯渇が問題となっている。

IPv6

次世代インターネットプロトコル。128ビットの広大なアドレス空間を持つが、移行には時間を要している。

ISO(International Organization for Standardization)

国際標準化機構。OSI参照モデルを策定した組織。

L

LAN(Local Area Network)

限定された地域内でのコンピュータネットワーク。一般的にEthernetが使用される。

LACNIC(Latin America and Caribbean Network Information Centre)

中南米・カリブ海地域のIPアドレス管理を行う地域インターネットレジストリ。2017年にIPv4アドレスが枯渇した。

OSPFで使用されるリンク状態情報の広告。ネットワークトポロジ情報を他のルーターに伝達する。

OSPFルーターが保持するリンク状態データベース。ネットワーク全体のトポロジ情報を格納する。

M

MACアドレス(Media Access Control Address)

データリンク層で使用される48ビットの物理アドレス。Ethernetフレームの送信元・宛先識別に使用される。世界的に一意な値。

MACアドレス学習

Ethernetスイッチが送信元MACアドレスとポートの対応を自動的に学習する機能。効率的なフレーム転送を実現する。

MTU(Maximum Transmission Unit)

一度に送信可能な最大データサイズ。Ethernetでは通常1500バイト。

N

NAT(Network Address Translation)

ネットワークアドレス変換。プライベートIPアドレスとパブリックIPアドレスを相互変換する技術。IPv4アドレス枯渇への対症療法として広く普及。

NAPT(Network Address Port Translation)

ネットワークアドレスポート変換。NATにポート番号の変換を加えた技術。一つのパブリックIPアドレスで複数の内部ホストを共有可能。

NAT traversal

NAT環境を越えて直接通信を行うための技術群。STUN、TURN、ICEなどが含まれる。

O

OSPF(Open Shortest Path First)

リンクステート型のルーティングプロトコル。SPFアルゴリズムを使用して最短経路を計算する。エリア設計によりスケーラビリティを確保。

OSI参照モデル(Open Systems Interconnection Reference Model)

ISOが定めた7層のネットワークアーキテクチャモデル。理論的に美しいが実装が複雑で、実際にはTCP/IPモデルが普及した。

R

RIPE NCC(Réseaux IP Européens Network Coordination Centre)

ヨーロッパ・中東・中央アジア地域のIPアドレス管理を行う地域インターネットレジストリ。2019年に完全枯渇した。

Route Reflector

iBGPのフルメッシュ要件を回避するための技術。BGPルートの反射機能を提供してスケーラビリティを向上させる。

S

SPFアルゴリズム(Shortest Path First Algorithm)

OSPFで使用される最短経路計算アルゴリズム。ダイクストラ法とも呼ばれる。

スタティックルーティング

手動で設定される固定的な経路情報。設定が簡単で動作が予測可能だが、障害時の自動切り替えができない。

STUN(Session Traversal Utilities for NAT)

NAT環境で自身の外部IPアドレスとポート番号を発見するためのプロトコル。P2P通信の確立に使用される。

スイッチング

Ethernetスイッチによるフレーム転送機能。MACアドレステーブルを参照して適切なポートにフレームを転送する。

T

TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)

インターネットで使用される4層のプロトコルスタック。実装重視の設計でOSI参照モデルに勝利し、現在のインターネットの基盤となった。

Token Ring

IBMが開発したLAN技術(IEEE 802.5)。トークン巡回による決定論的なアクセス制御を行うが、複雑性と高コストによりEthernetに敗れた。

TURN(Traversal Using Relays around NAT)

NAT環境でのP2P通信が困難な場合に、中継サーバーを経由して通信を行うプロトコル。

V

VLAN(Virtual Local Area Network)

物理的なネットワーク構成に関係なく、論理的にLANを分割する技術。ポートベース、MACアドレスベース、プロトコルベースなどの方式がある。

VLSM(Variable Length Subnet Mask)

可変長サブネットマスク。単一のネットワーク内で異なるサブネットマスク長を使用し、アドレス空間を効率的に利用する技術。

あ行

アクセス制御

ネットワークへのアクセス方法を制御する技術。EthernetのCSMA/CDやToken Ringのトークン巡回などがある。

エリア設計

OSPFにおけるネットワークの階層化手法。LSDBサイズを制御し、SPF計算の負荷を軽減する。

オーバーヘッド

プロトコル処理に伴う追加的な処理負荷やデータ。階層化により生じるが、モジュラリティとのトレードオフとなる。

か行

衝突ドメイン

Ethernetにおいてフレーム衝突が発生する範囲。スイッチの導入により各ポートが独立した衝突ドメインとなった。

経路集約

複数の詳細な経路を一つの集約経路として広告する技術。ルーティングテーブルサイズの削減とスケーラビリティの向上を実現。

コンバージェンス

ルーティングプロトコルがネットワーク変更に対して経路情報を収束させる過程。収束時間はネットワークの安定性に影響する。

さ行

指数バックオフ

Ethernetの衝突発生時に使用される再送待機時間の算出方法。衝突回数に応じて待機時間を指数的に増加させる。

ステートフル性

NATデバイスが内部・外部間の通信状態を記録・管理する特性。セッション管理により変換テーブルを維持する。

スケーラビリティ

システムの拡張性。ネットワークの成長に対してパフォーマンスを維持できる能力。

た行

ダイナミックルーティング

ルーティングプロトコルにより自動的に経路情報を学習・更新する方式。ネットワーク変更に自動対応できるが、設定が複雑。

は行

ハブ・スポーク構成

中央のハブサイトと複数のスポークサイトを接続するネットワーク構成。スタティックルーティングでよく採用される。

ま行

マルチホーム構成

複数のISPや回線を使用してインターネットに接続する構成。冗長性と負荷分散を実現する。

ら行

ルーティングテーブル

ルーターが保持する経路情報のテーブル。宛先ネットワークと次ホップの対応関係を記録する。

レガシー設定

従来からの設定方式。GitHub Pagesにおいて「Deploy from a branch」方式を指す場合がある。

注意: この用語集は本書で使用される技術用語の理解を深めるためのものです。より詳細な情報については、各章の本文および参考文献を参照してください。