第1章: Linuxの世界への第一歩

🎯 この章の目標

  • Linuxの基本的な概念を理解する
  • 基本コマンド10個をマスターする
  • ファイルとディレクトリを自由に操作できる

🚀 できるようになること

  • ターミナルでファイル操作ができる
  • コマンドで効率的に作業できる
  • Linuxシステムの構造が理解できる

1.1 Linuxファイルシステムの構造理解

なぜファイルシステムを理解する必要があるのか?

Windowsでは、エクスプローラーを使って視覚的にファイルを操作します。 Linuxでは、主にコマンドでファイルを操作するため、「今どこにいるか」「どこに何があるか」を理解することが重要です。

Linuxの世界へようこそ!

Linuxは、Windowsとは少し違う世界です。でも心配しないでください。一歩ずつ進めば、すぐに慣れます。

Linuxファイルシステム構造図

💡 簡単な例え話

  • Windowsは「複数の建物(C:、D:ドライブ)」がある
  • Linuxは「1つの大きな建物(/)」の中に全部屋がある

上の図は、Linuxファイルシステムの階層構造を視覚的に示しています。ルートディレクトリ(/)から始まり、各ディレクトリが特定の役割を持って配置されていることがわかります。

# 現在位置の確認
pwd
# 出力例: /home/username

# ルートディレクトリへ移動
cd /

# 主要ディレクトリの確認
ls -la

主要ディレクトリの役割:

  • /home: ユーザーのホームディレクトリ
  • /etc: システム設定ファイル
  • /var: 可変データ(ログ、キャッシュ)
  • /usr: ユーザープログラム
  • /tmp: 一時ファイル(再起動で削除)

WSL2環境での特殊性

WSL2では、Windowsファイルシステムが/mnt以下にマウントされます。

# Windowsのドライブ確認
ls /mnt/
# 出力: c  d  (ドライブに応じて)

# WindowsのCドライブアクセス
cd /mnt/c/Users/
ls

1.2 必須コマンド10個の習得

覚え方のコツ

  • 最初は3個だけ: ls(見る)、cd(移動)、pwd(現在地)
  • 慣れたら追加: mkdir(作る)、cp(コピー)、rm(削除)
  • 必要に応じて: 残りのコマンド

1. pwd - 現在のディレクトリ確認(Print Working Directory)

pwd
# 実行結果例:
# /home/username

# これは「今、home フォルダの中の username フォルダにいます」という意味

💡 いつ使う?

  • 迷子になった時
  • スクリプトで現在位置を確認する時

2. ls - ファイル・ディレクトリ一覧(List)

# 基本形(シンプル表示)
ls
# 実行結果例:
# Desktop  Documents  Downloads  Pictures

# 詳細表示(よく使う!)
ls -la
# 実行結果例:
# total 32
# drwxr-xr-x 5 user user 4096 Jan 15 10:30 .
# drwxr-xr-x 3 root root 4096 Jan 10 09:00 ..
# drwxr-xr-x 2 user user 4096 Jan 15 10:00 Desktop
# -rw-r--r-- 1 user user  220 Jan 10 09:00 .bashrc

# 人間が読みやすいサイズ表示
ls -lh
# 実行結果例:
# -rw-r--r-- 1 user user 1.5K Jan 15 10:25 file.txt
#                        ↑ キロバイト表示(1024より1.5Kの方が分かりやすい)

ls の出力の読み方(重要!)

drwxr-xr-x 2 user group 4096 Jan 15 10:30 directory
│└─┴─┴─┘  │  │    │     │    │             │
│権限     │  │    │     │    │             └─名前
│         │  │    │     │    └─更新日時
│         │  │    │     └─サイズ(バイト)
│         │  │    └─グループ(チーム名)
│         │  └─所有者(持ち主)
│         └─リンク数(気にしなくてOK)
└─種類(d:フォルダ、-:ファイル)

3. cd - ディレクトリ移動

# ホームディレクトリへ
cd
# または
cd ~

# 親ディレクトリへ
cd ..

# 絶対パス指定
cd /var/log

# 相対パス指定
cd ./subdirectory

# 直前のディレクトリへ戻る
cd -

4. mkdir - ディレクトリ作成

# 単一ディレクトリ作成
mkdir testdir

# 親ディレクトリも含めて作成
mkdir -p project/src/main

# 複数同時作成
mkdir dir1 dir2 dir3

# 権限指定
mkdir -m 755 public

5. touch - ファイル作成・タイムスタンプ更新

# 新規ファイル作成
touch newfile.txt

# 複数ファイル作成
touch file1.txt file2.txt file3.txt

# タイムスタンプ更新(既存ファイル)
touch existing.txt

6. cp - コピー

# ファイルコピー
cp source.txt destination.txt

# ディレクトリ再帰コピー
cp -r sourcedir/ destdir/

# 上書き前に確認
cp -i source.txt destination.txt

# 属性保持コピー
cp -p source.txt destination.txt

7. mv - 移動・名前変更

# ファイル名変更
mv oldname.txt newname.txt

# ディレクトリ移動
mv file.txt /home/user/documents/

# 複数ファイル移動
mv *.log /var/log/archive/

# 上書き前に確認
mv -i source.txt destination.txt

8. rm - 削除

# ファイル削除
rm file.txt

# 確認付き削除(推奨)
rm -i file.txt

# ディレクトリ削除
rm -r directory/

# 強制削除(注意)
rm -rf directory/

# 安全な使用例
rm -rf /home/$(whoami)/tmp/*
# 危険な例(実行禁止)
# rm -rf /  # システム全体削除

9. cat - ファイル内容表示

# ファイル表示
cat file.txt

# 複数ファイル連結
cat file1.txt file2.txt > combined.txt

# 行番号付き表示
cat -n file.txt

# 改行・タブを可視化
cat -A file.txt

10. less - ページング表示

# ファイルをページング表示
less largefile.log

# 操作方法:
# Space: 次ページ
# b: 前ページ
# /word: 検索
# n: 次の検索結果
# G: 最終行へ
# g: 先頭行へ
# q: 終了

# パイプラインでの使用
ls -la /etc | less

1.3 パーミッション(権限)の理解と操作

権限の基本構造

パーミッション説明図

# 権限確認
ls -l script.sh
# 出力: -rwxr-xr-- 1 user group 245 Jan 15 10:30 script.sh

# 権限の意味
# rwx r-x r--
# │││ │││ │││
# │││ │││ └┴┴─ その他(other): 読み取りのみ
# │││ └┴┴─ グループ(group): 読み取り・実行
# └┴┴─ 所有者(user): 読み取り・書き込み・実行

上の図は、Linuxのファイルパーミッション(権限)システムを分かりやすく説明しています。所有者、グループ、その他のユーザーごとに、読み取り(r)、書き込み(w)、実行(x)の権限がどのように設定されるかを視覚的に理解できます。

chmod - 権限変更

# 数値指定(推奨)
chmod 755 script.sh  # rwxr-xr-x
chmod 644 data.txt   # rw-r--r--
chmod 600 secret.key # rw-------

# 記号指定
chmod +x script.sh   # 実行権限追加
chmod -w file.txt    # 書き込み権限削除
chmod u+x,g+r file   # 所有者に実行、グループに読み取り追加

権限の数値表現:

  • 4: 読み取り(r)
  • 2: 書き込み(w)
  • 1: 実行(x)
  • 合計値: 7=rwx、6=rw-、5=r-x、4=r–

実践演習: スクリプト作成と実行

# 1. スクリプト作成
echo '#!/bin/bash' > hello.sh
echo 'echo "Hello, Linux!"' >> hello.sh
echo 'date' >> hello.sh

# 2. 権限確認
ls -l hello.sh
# 出力: -rw-r--r-- (実行権限なし)

# 3. 実行試行(失敗)
./hello.sh
# エラー: Permission denied

# 4. 実行権限付与
chmod +x hello.sh
# または
chmod 755 hello.sh

# 5. 実行(成功)
./hello.sh
# 出力: Hello, Linux!
#      Tue Jan 15 10:30:45 JST 2025

1.4 WSL2特有のファイル操作

Windows-Linux間のファイル共有

# LinuxからWindowsファイルへアクセス
# デスクトップのファイルをコピー
cp /mnt/c/Users/$(whoami)/Desktop/document.txt ~/

# WindowsからLinuxファイルへアクセス
# エクスプローラーで開く
explorer.exe .

# WSL2のネットワークパス
# \\wsl$\Ubuntu-24.04\home\username

パフォーマンス考慮事項

# 高速: Linux側ファイルシステム
time find ~ -name "*.txt" | head -100

# 低速: Windows側ファイルシステム
time find /mnt/c -name "*.txt" | head -100

# 推奨: 作業ファイルはLinux側に配置
cp -r /mnt/c/project ~/
cd ~/project
# 作業実施

改行コード問題の対処

# Windows改行(CRLF)確認
cat -A windows_file.txt
# 出力: line1^M$

# Linux改行(LF)へ変換
dos2unix windows_file.txt
# またはsedで変換
sed -i 's/\r$//' windows_file.txt

# 確認
cat -A windows_file.txt
# 出力: line1$

1.5 演習問題

演習1: ディレクトリ構造作成

以下の構造を作成してください:

~/project/
├── src/
│   ├── main/
│   └── test/
├── docs/
├── config/
└── README.md

解答例:

mkdir -p ~/project/{src/{main,test},docs,config}
touch ~/project/README.md
tree ~/project  # treeコマンドで確認(要インストール: sudo apt install tree)

演習2: ファイル操作練習

# 1. testディレクトリ作成
mkdir ~/file_practice
cd ~/file_practice

# 2. 10個のファイル作成
for i in {1..10}; do touch file$i.txt; done

# 3. 偶数番号ファイルをevenディレクトリへ移動
mkdir even
mv file{2,4,6,8,10}.txt even/

# 4. 奇数番号ファイルをアーカイブ
tar -czf odd_files.tar.gz file*.txt

# 5. クリーンアップ
rm file*.txt

演習3: 権限管理

# セキュアなディレクトリ作成
mkdir ~/secure
chmod 700 ~/secure

# 共有ディレクトリ作成
mkdir ~/shared
chmod 755 ~/shared

# 実行可能スクリプト作成
cat << 'EOF' > ~/backup.sh
#!/bin/bash
tar -czf backup_$(date +%Y%m%d).tar.gz ~/documents
EOF
chmod 750 ~/backup.sh

1.6 トラブルシューティング

よくある問題と対処

症状 原因 対処法
ls: cannot access ディレクトリが存在しない パスを確認、pwdで現在位置確認
Permission denied 権限不足 ls -lで権限確認、必要に応じてsudo使用
No such file or directory ファイルパス誤り タブ補完使用、大文字小文字確認
Directory not empty 空でないディレクトリ削除 rm -r使用
/mnt/cが遅い ファイルシステム越境 Linux側へファイルコピー

デバッグのコツ

# コマンド実行前の確認
ls target_file.txt  # ファイル存在確認
pwd                 # 現在位置確認

# エラー時の情報収集
echo $?            # 直前のコマンドの終了コード(0=成功)
type command_name  # コマンドの場所確認
which command_name # 実行ファイルパス確認

まとめ

本章で習得した10個のコマンドは、Linux操作の90%以上をカバーします。特に重要なのは:

  1. 階層構造の理解: pwdとcdで位置を常に把握
  2. 権限の意識: ls -laで確認を習慣化
  3. 安全な削除: rm -rfは最後の手段

次章では、これらのコマンドを組み合わせたテキスト処理を学習します。