title: “Frida / objection による動的解析” part: “Part 5” chapter: “5-3”
Frida / objection による動的解析
Frida は動的計装フレームワークであり、objection は Frida をラップしてモバイル向けの操作を簡易化したツールである。本章では、これらを用いたモバイルアプリの動的解析と、代表的なユースケース(証明書ピンニングのバイパス、ランタイム検査)を整理する。
本章のゴール
- 前提:検証環境(root / Jailbreak 端末、または Frida Gadget 等)を用意し、本番端末ではなく検証用途に限定して実施する。
- 到達目標:Frida / objection の役割と前提条件を理解し、証明書ピンニングや root 検知などの防御機構の挙動を観察・評価する方針を説明できる。
- 対応演習:演習用アプリを対象に、objection 等で HTTPS 観測を可能にした上で、認証フローや機密データの取り扱いをランタイム観点で確認する(確認結果は 学習ログテンプレート(Burp Academy / 演習) に記録する)。
Frida / objection の役割
- Frida
- ランタイムで任意のスクリプトを注入し、関数の呼び出しや戻り値をフックできる
- Android / iOS / Windows など複数プラットフォームに対応
- objection
- Frida を利用したコマンドラインツール
- ルート検知バイパス、証明書ピンニング無効化、ファイルシステム探索など、モバイル Pentest によく用いられる操作を提供
Pentest では、アプリが実装している「防御機構そのもの」の動作確認やバイパスに利用される。
図5-3 は、解析端末から Frida サーバ/ガジェットを介してアプリにアタッチし、必要に応じてプロキシ(Burp)で HTTPS 通信を観測する構成例である。動的解析では、通信観測とランタイム観察を組み合わせて、成立条件と影響範囲を整理する。
図5-3: Frida / objection を用いた動的解析の構成例(概要)
flowchart LR
Analyst[解析端末\n(objection / Frida)] -->|attach| Frida[Frida Server / Gadget]
Frida --> App[モバイルアプリ\n(端末 / エミュレータ)]
App -->|HTTPS| Proxy[プロキシ\n(Burp)]
Proxy --> API[バックエンド API]
Hooks[観察ポイント\n(証明書ピンニング / root検知 / 機密データ等)] -.-> App
動的解析の前提
Frida / objection を利用するには、次の前提条件がある。
- Android
- root 化端末または Frida Gadget を組み込んだアプリ
- USB デバッグまたはネットワーク経由での接続
- iOS
- Jailbreak 環境が一般的
- Frida サーバのインストール
実務では、社内検証用端末として root / Jailbreak 端末を運用するケースが多い一方で、本番端末に対してこれらの操作を行うことは推奨されない。
代表的なユースケース
Frida / objection を用いた代表的な解析シナリオは次のとおりである。
- 証明書ピンニングのバイパス
- TLS ハンドシェイク時の検証関数をフックし、常に成功扱いにする
- これにより、Burp 等のプロキシで HTTPS 通信内容を観測可能にする
- root / Jailbreak 検知のバイパス
- ルート検知に利用される API 呼び出しをフックし、常に「非 root」と判断させる
- 機密データのトレース
- 暗号化前後のデータ、トークン、キーなどがメモリ上でどのように扱われているかを観察する
これらは攻撃者も利用しうる手法であるため、「防御者としてどこまで耐性を持たせるか」を設計・評価する上でも重要である。
注意点
Frida / objection を用いた解析は強力だが、次の点に留意する。
- 実機・本番環境での利用は制限し、開発・検証環境に限定する
- アプリのライセンスや利用規約に反しない範囲で実施する
- 不具合やクラッシュを引き起こす可能性があるため、テスト用データでの検証を徹底する
本書の演習では、意図的に防御機構を簡略化したサンプルアプリを用い、Frida / objection の基本操作に慣れることを目標とする。
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本章のポイント
- Frida は動的計装、objection はその操作を簡易化するツールであり、防御機構の動作確認やバイパスを含む動的解析に用いる。
- 利用には root / Jailbreak 環境や Frida Gadget などの前提があり、実務では本番端末ではなく検証環境に限定して運用する。
- 証明書ピンニングや root 検知のバイパス、機密データのトレースなどのユースケースを、法令・規約・安全性に配慮しながら実施する。