付録B:用語解説
本書で使用された技術用語を分かりやすく解説します。専門的な内容も、できるだけ身近な例を使って説明しています。
A
AGI(Artificial General Intelligence / 汎用人工知能) 人間が行える知的作業のすべてを、人間と同等またはそれ以上の水準で実行できるAI。現在のAIは特定の分野(画像認識、翻訳など)に特化しているが、AGIは人間のように様々な分野で柔軟に対応できる。例:人間のように、数学の問題を解き、詩を書き、料理のレシピを考え、人間関係の相談に乗ることが全てできるAI。
AI(Artificial Intelligence / 人工知能) 人間の知的な働きを機械で模倣する技術。狭義では、特定の問題を解決するコンピュータプログラム。広義では、学習・推論・判断などの知的活動を行うシステム全般。身近な例:スマートフォンの音声アシスタント、写真の自動分類、翻訳アプリ。
アルゴリズム(Algorithm) 問題を解決するための手順や方法を、明確に定義したもの。料理のレシピのように、「何を、どの順番で、どのように行うか」を具体的に示す。コンピュータプログラムの基本的な構成要素。例:「道案内アルゴリズム」は、出発地から目的地までの最短経路を見つける手順。
API(Application Programming Interface) 異なるソフトウェア間でデータのやり取りを行うための「橋渡し」の仕組み。レストランの注文システムのように、客(アプリ)が厨房(サーバー)に料理(データ)を注文する際の、決められた注文方法。例:天気予報アプリが気象庁のデータを取得する際の決まった手順。
AR(Augmented Reality / 拡張現実) 現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。スマートフォンのカメラ越しに、実際の風景に追加情報を表示する。例:Pokemon GO、家具配置アプリ(実際の部屋に仮想家具を配置してみる)、AR翻訳(看板にカメラを向けると翻訳が表示される)。
B
バックプロパゲーション(誤差逆伝播法) ニューラルネットワークの学習方法。出力の間違いを、ネットワークの最後から最初に向かって「逆向きに」伝えることで、各層の重みを調整する。例:テストで間違えた問題を、「どこで考え方を間違えたか」を最後から順番に見直していく過程に似ている。
ビッグデータ(Big Data) 従来の方法では処理困難な、大量で多様で高速に変化するデータ。3つのV(Volume:量、Variety:多様性、Velocity:速度)で特徴づけられる。例:Googleの検索ログ、Twitterの全投稿、通信会社の通話記録、気象観測データなど。
ビットコイン(Bitcoin) 2008年に発明された世界初の暗号通貨(仮想通貨)。中央銀行のような管理者なしに、コンピュータネットワークで取引を管理する。ブロックチェーン技術を使用している。デジタルゴールドとも呼ばれる。
ブロックチェーン(Blockchain) 取引記録を「ブロック」という単位でまとめ、それを鎖(チェーン)のように連結して保存する技術。一度記録したデータを後から改ざんすることが極めて困難。例:取引帳簿を複数の人で共有し、全員の合意なしには書き換えできないようにした仕組み。
ブラウザ(Browser) ウェブページを表示するソフトウェア。インターネット上の情報を見るための「窓」の役割。例:Chrome、Safari、Firefox、Edge。HTML、CSS、JavaScriptなどの言語で書かれたWebページを、人間が理解できる形で表示する。
C
ChatGPT OpenAIが開発した対話型AI。GPT(Generative Pre-trained Transformer)技術を基盤とし、人間との自然な会話ができる。2022年11月の公開後、5日で100万ユーザーを突破する社会現象となった。文章作成、質問応答、プログラミング支援など多様なタスクに対応。
クラウドコンピューティング(Cloud Computing) インターネット経由でコンピュータ資源(ソフトウェア、ストレージ、計算能力)を利用するサービス。自分のパソコンに保存せず、インターネット上の「雲(クラウド)」にデータやアプリを置く概念。例:Gmail、Dropbox、Netflix、Google Drive。
コンパイラ(Compiler) プログラミング言語で書かれたコードを、コンピュータが理解できる機械語に翻訳するソフトウェア。人間の言葉で書いた指示を、機械の言葉に変換する「通訳者」の役割。グレース・ホッパーが世界初のコンパイラを開発。
D
DAO(Decentralized Autonomous Organization / 分散自律組織) ブロックチェーン技術を使い、中央管理者なしに運営される組織。スマートコントラクトでルールが自動実行され、参加者の投票で意思決定する。例:従来の会社のような社長・役員がいない組織で、全てコンピュータプログラムで自動運営される。
データベース(Database) 大量の情報を整理して保存し、必要な時に素早く取り出せるようにしたシステム。図書館の蔵書管理システムのように、情報を分類・整理して効率的に管理する。例:顧客管理システム、在庫管理システム、学生の成績管理システム。
深層学習(Deep Learning) 人間の脳の神経細胞の仕組みを模倣した「ニューラルネットワーク」を、非常に多くの層(深く)重ねた機械学習手法。大量のデータから複雑なパターンを自動的に学習できる。例:写真に写っているものの認識、音声認識、自動翻訳。
デジタルツイン(Digital Twin) 現実世界の物体やシステムをデジタル空間で完全に再現したもの。現実の「双子(ツイン)」をコンピュータの中に作る。例:工場の機械をデジタルで再現し、故障を予測したり、改善案をテストしたりする。
E
エッジコンピューティング(Edge Computing) データを遠くのクラウドサーバーではなく、より近い場所(エッジ)で処理する技術。例:自動運転車の判断をクラウドで行うと通信遅延で事故のリスクがあるため、車内のコンピュータで瞬時に判断する。
暗号化(Encryption) 情報を第三者に理解できない形に変換すること。秘密の手紙を暗号で書くように、データを特殊な方法で変換し、正しい「鍵」がないと元に戻せないようにする技術。例:クレジットカード番号の送信、パスワードの保存、機密文書の保護。
F
フィンテック(FinTech) 金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。ITを活用した新しい金融サービス。例:スマートフォンでの送金アプリ、オンライン家計簿、ロボアドバイザー(AIによる投資助言)、暗号通貨。
フレームワーク(Framework) ソフトウェア開発で、よく使う機能をあらかじめ用意した「土台」や「枠組み」。家を建てる時の基礎工事のように、毎回同じ作業を繰り返さなくて済むようにした仕組み。例:Webサイト開発のReact、機械学習のTensorFlow。
G
GUI(Graphical User Interface) アイコン、ボタン、メニューなどの視覚的要素でコンピュータを操作する仕組み。文字だけのコマンド入力(CUI)ではなく、マウスで画面をクリックして操作する方式。スティーブ・ジョブズが普及に大きく貢献した。
GPS(Global Positioning System) 衛星を使った位置測定システム。スマートフォンの地図アプリや車のナビゲーションシステムで、現在地を特定するために使用される。元々は軍事目的で開発されたが、現在は民間でも広く利用されている。
H
HTML(HyperText Markup Language)
ウェブページを作るための言語。文章の構造(見出し、段落、リンクなど)を指定する「マークアップ」言語。ティム・バーナーズ=リーがWorld Wide Web と同時に開発した。例:<h1>見出し</h1>
、<p>段落</p>
のような「タグ」で文書構造を記述。
HTTP(HyperText Transfer Protocol) ウェブブラウザとウェブサーバー間でデータをやり取りするための通信規約。インターネットで情報を送受信する際の「共通言語」。URLの最初の「http://」や「https://」はこのプロトコルを指している。
I
IoT(Internet of Things / モノのインターネット) 従来インターネットに接続されていなかった物体(家電、自動車、センサーなど)をネットワークに接続し、相互に通信できるようにする技術。例:スマート家電(エアコン、冷蔵庫)、スマートウォッチ、自動運転車。
IP アドレス(Internet Protocol Address) インターネット上の機器を識別するための住所のような番号。郵便の住所のように、データを正しい宛先に届けるために使用される。例:192.168.1.1のような数字の組み合わせで表される。
J
JavaScript ウェブページに動的な機能を追加するプログラミング言語。ページ上でボタンをクリックした時の動作や、リアルタイムでの内容更新などを実現する。現在はWebだけでなく、サーバーやアプリ開発でも広く使用されている。
K
機械学習(Machine Learning) コンピュータが大量のデータからパターンや規則を自動的に学習し、新しいデータに対して予測や判断を行う技術。人間が明示的にプログラムしなくても、経験から学習して性能を向上させる。例:迷惑メール判定、商品推薦、画像認識。
L
LISP(List Processing) 1958年にジョン・マッカーシーが開発したプログラミング言語。人工知能研究で広く使用された。リスト(データの並び)を効率的に処理できることが特徴。数学的で抽象的な概念を扱いやすく、AI研究の初期から重要な役割を果たした。
Linux リーナス・トーバルズが開発したオープンソースのオペレーティングシステム。世界中の開発者が協力して開発・改良している。サーバーやスマートフォン(Android)、組み込みシステムで広く使用されている。
M
メタバース(Metaverse) 仮想現実空間で人々が交流・活動できるデジタル世界。3D空間でアバター(分身)を操作し、他の人と会話、ゲーム、仕事、ショッピングなどができる。例:VRヘッドセットを使ったバーチャル会議、仮想空間でのコンサート。
マイクロプロセッサ(Microprocessor) コンピュータの「頭脳」にあたる超小型の計算装置。1個のチップ(集積回路)に、計算処理を行うCPU(中央処理装置)の機能を集約したもの。嶋正利が共同開発したIntel 4004が世界初。現在のスマートフォン、パソコンの心臓部。
ムーアの法則(Moore’s Law) インテル創設者ゴードン・ムーアが1965年に提唱した法則。「半導体の集積度(性能)は18-24ヶ月で2倍になる」という観測。長年にわたりコンピュータ業界の発展を予測・牽引してきたが、物理的限界により近年は鈍化している。
N
NFT(Non-Fungible Token) 「代替不可能なトークン」。ブロックチェーン技術を使い、デジタルデータに唯一性と所有権を証明する仕組み。デジタルアートや音楽、ゲームアイテムなどに「この作品の所有者は○○さん」という証明書を付ける技術。
ニューラルネットワーク(Neural Network) 人間の脳の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模倣したコンピュータモデル。多数の人工ニューロンを層状に接続し、データから学習する。深層学習の基盤技術。例:手書き文字認識、音声認識、画像分類。
O
オープンソース(Open Source) ソフトウェアのソースコード(設計図)を一般公開し、誰でも自由に使用・改良・再配布できるようにする開発方式。例:Linux、Python、TensorFlow。企業の利益追求より、技術の共有と改善を重視する文化。
OS(Operating System / オペレーティングシステム) コンピュータのハードウェアとソフトウェアを管理し、ユーザーがコンピュータを使えるようにする基本ソフトウェア。例:Windows、macOS、iOS、Android。コンピュータの「執事」のような役割。
P
プログラミング言語(Programming Language) 人間がコンピュータに指示を与えるための人工言語。英語や日本語のような自然言語と、機械語の中間に位置し、人間にとって理解しやすく、かつコンピュータが実行できる形に変換可能。例:Python、Java、C++、JavaScript。
Python 1991年にグイド・ヴァンロッサムが開発したプログラミング言語。読みやすく書きやすい文法が特徴で、AI・機械学習、Web開発、データ分析など幅広い分野で使用される。初心者にも学習しやすい言語として人気。
Q
量子コンピュータ(Quantum Computer) 量子力学の原理(重ね合わせ、量子もつれ)を利用したコンピュータ。従来のコンピュータが「0」または「1」で計算するのに対し、「0でもあり1でもある」状態で計算することで、特定の問題を飛躍的に高速で解くことができる。
量子ビット(Qubit) 量子コンピュータの情報の基本単位。従来のビットが0または1の値を取るのに対し、量子ビットは0と1の重ね合わせ状態を持つことができる。この性質により、量子コンピュータは指数関数的な計算能力を実現する。
R
ロボット(Robot) 自動的に作業を行う機械。センサーで環境を認識し、プログラムされた指示やAIの判断に基づいて動作する。例:産業用ロボット(組み立て、溶接)、掃除ロボット、人型ロボット、自動運転車。
RGB(Red, Green, Blue) 色を表現するための方式。赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の3色の光の強さを組み合わせて、あらゆる色を表現する。デジタル画面やデジタル画像で標準的に使用される。例:白色は(255, 255, 255)、黒色は(0, 0, 0)。
S
SaaS(Software as a Service) ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス形態。従来のようにソフトウェアを購入・インストールする代わりに、ブラウザで利用する。例:Gmail、Google Docs、Salesforce、Zoom。月額料金で利用することが多い。
SNS(Social Networking Service) インターネット上で人と人とのつながりを作り、交流を支援するサービス。友人・知人との関係を維持したり、共通の興味を持つ人と新しいつながりを作ったりできる。例:Facebook、Twitter(X)、Instagram、LinkedIn。
SSL/TLS(Secure Sockets Layer / Transport Layer Security) インターネット上でデータを安全に送受信するための暗号化技術。ウェブサイトのURLが「https://」で始まる場合、この技術が使用されている。クレジットカード情報やパスワードなどの重要なデータを保護する。
T
TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol) インターネットでデータ通信を行うための基本的な通信規約(プロトコル)。世界中のコンピュータが共通のルールで通信できるようにする「共通語」の役割。現在のインターネットの基盤技術。
チューリングマシン(Turing Machine) アラン・チューリングが1936年に提案した理論的な計算機械。現代コンピュータの理論的基盤となった概念。「計算可能な問題」と「計算不可能な問題」を数学的に定義し、コンピュータサイエンスの理論的基礎を築いた。
チューリングテスト(Turing Test) チューリングが提案した、機械の知能を判定するテスト。人間の判定者が、相手が人間かコンピュータか分からない状況で会話し、コンピュータを人間と誤認する場合、そのコンピュータは「知能を持つ」とみなす。
U
URL(Uniform Resource Locator) インターネット上の情報の「住所」。ウェブページ、画像、動画などの場所を特定するために使用される。例:https://www.example.com のような形式。ティム・バーナーズ=リーがWorld Wide Web と同時に開発した。
UX/UI(User Experience / User Interface) UXは「ユーザー体験」、UIは「ユーザーインターフェース」の略。UXは製品・サービスを使った時の総合的な体験の質、UIは具体的な画面デザインや操作方法を指す。スティーブ・ジョブズが重視した「使いやすさ」の現代的表現。
V
VR(Virtual Reality / 仮想現実) コンピュータが作り出した人工的な環境を、あたかも現実のように体験できる技術。専用のヘッドセットを装着し、360度の仮想空間に没入する。例:VRゲーム、VR映画、VR会議、建築設計のVRプレビュー。
VPN(Virtual Private Network) インターネット上に仮想的な専用回線を構築し、安全にデータ通信を行う技術。公衆WiFiなどの安全でないネットワークでも、暗号化によって安全な通信を実現する。リモートワークでの社内システムアクセスなどで利用される。
W
Web3(ウェブスリー) ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念。従来のWeb(Web2.0)が大手プラットフォーム企業に依存していたのに対し、ユーザーがデータと価値を直接所有・制御できる次世代インターネット。
WiFi(ワイファイ) 無線でインターネットに接続する技術。家庭や店舗で、ケーブルを使わずにスマートフォンやパソコンをインターネットに接続できる。正式名称は「IEEE 802.11」だが、一般的にWiFiという商標名で呼ばれる。
X
XML(eXtensible Markup Language) データの構造を記述するための言語。HTMLと似ているが、より汎用的で、様々な種類のデータを整理・交換するために使用される。例:設定ファイル、データベース間のデータ交換、Webサービス間の通信。
Y
YouTube 2005年に設立された動画共有プラットフォーム。誰でも動画を投稿・視聴でき、現在は世界最大の動画サイト。創作者が広告収入を得られる仕組みを導入し、「YouTuber」という新しい職業も生まれた。2006年にGoogleが買収。
Z
ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof) 秘密の情報を相手に教えることなく、その情報を知っていることを証明する暗号技術。例:パスワードそのものを教えずに、正しいパスワードを知っていることを証明する。プライバシー保護とセキュリティの両立を可能にする先端技術。
数字・記号
5G(Fifth Generation) 第5世代移動通信システム。4Gより大幅に高速(最大10Gbps)、低遅延(1ms以下)、多数同時接続が可能。IoT、自動運転、VR/ARなど、リアルタイム性が重要なサービスを支える通信インフラ。
API(Application Programming Interface) (「A」の項目を参照)
この用語解説は、技術の発展とともに常に更新される必要があります。特に人工知能、量子コンピュータ、ブロックチェーンなどの分野では、新しい概念や技術が継続的に生まれています。最新の動向については、信頼できる技術情報源を定期的に確認することをお勧めします。