はじめに

AI主導開発時代の到来

私たちソフトウェア開発の現場は、今まさに歴史的な転換点を迎えています。GitHub Copilot、ChatGPT、Claude といったAI支援ツールの急速な普及により、コードの書き方、開発のスピード、そして品質保証のあり方が根本的に変わろうとしています。

従来、一行一行丁寧に書いていたコードが、今やプロンプト一つで数十行、時には数百行が瞬時に生成される時代です。開発者の生産性は飛躍的に向上し、アイデアからプロトタイプまでの時間は劇的に短縮されました。

しかし、この素晴らしい変化の裏側で、新たな課題が浮き彫りになっています。AI が生成するコードは本当に信頼できるのか?従来のテスト手法で十分なのか?品質保証の責任は誰にあるのか?

本書の目的

本書は、AI主導開発時代における品質保証の新しいパラダイムを提示し、実践的な解決策を提供することを目的としています。理論だけでなく、実際の現場で使える具体的な手法、テンプレート、チェックリストを豊富に収録しました。

想定読者

  • QAエンジニア・テストエンジニア: AI生成コードの品質保証に課題を感じている方
  • 開発チームリーダー・アーキテクト: チーム全体の品質戦略を見直したい方
  • CTO・VP of Engineering: 組織レベルでの品質保証体制を構築したい方
  • DevOpsエンジニア: CI/CDパイプラインにAI品質検証を組み込みたい方

本書の構成

構成の概要(要約)

  • 第1部 基礎編: AI主導開発の現状、従来テスト技法の整理、AIコードの特性理解
  • 第2部 戦略編: テスト戦略の再構築、人間とAIの役割分担、リスクベースアプローチの進化
  • 第3部 実践編: 具体的な検証技法、メトリクス設計、組織・プロセス変革、ケーススタディ
  • 第4部 発展編: 説明可能性・倫理・将来トレンドなど高度なトピック 詳細な章構成や推奨される読み方については、第1章 1.3.2 節(本書の構成と読み方)でも改めて整理しているため、必要に応じてそちらも参照してほしい。

本書は4部構成となっています:

第1部:基礎編では、AI主導開発の現状とその課題、従来のテスト技法の限界、AIコードの特性について解説します。

第2部:戦略編では、AI時代に対応したテスト戦略の再構築、リスクベースアプローチの進化、人間とAIの最適な役割分担について述べます。

第3部:実践編では、具体的な検証技法、品質メトリクス、組織変革の進め方を詳細に説明します。実際のケーススタディも含まれています。

第4部:発展編では、AIの説明可能性、倫理的配慮、将来の技術トレンドといった高度なトピックを扱います。

読み方のガイド

本書は通読することを推奨しますが、読者の立場や関心によって以下のような読み方も可能です:

  • QAエンジニア: 第1〜3部を重点的に
  • マネージャー: 第2部と第8章(組織変革)を重点的に
  • 技術者: 第5〜6章(実践技法)を重点的に
  • 戦略立案者: 第2部と第4部を重点的に

実践的活用のために

本書の価値は読むだけでなく、実際に使うことで発揮されます。付録には以下の実用的な資料を用意しました:

  • テンプレート集: すぐに使えるテスト計画書やレポートの雛形
  • チェックリスト: AI生成コードレビューの観点一覧
  • ツール比較表: 選択の指針となる機能・特性比較

これらを活用して、あなたの現場でのAI品質保証を成功に導いてください。

本書のコード例・数値例について(誤読防止)

本書には、目的の異なる2種類の例が登場します。

  • 動作するサンプル: リポジトリの examples/ 配下(ローカルで実行して確認できる最小サンプル)
  • 概念説明のための例: 本文中のコードブロックや数値例(説明を簡潔にするための擬似コード(Pseudo code)・例示値)

本文中のコードや数値は、そのまま現場へコピーして使うことを想定していません。実運用へ適用する場合は、前提条件(対象システム・SLA・コスト制約・体制など)と、計測方法(期間、母集団、評価軸)を明確化した上で、自分の組織に合わせて置き換えてください。

継続的な学習とコミュニティ

AI技術の進歩は目覚ましく、この分野の知識は日々更新されていきます。本書を出発点として、継続的な学習とコミュニティでの情報交換を強く推奨します。

著者の最新情報や追加リソースは、書籍の公式サイト(リポジトリ)で公開していく予定です。読者の皆様からのフィードバックやご質問もお待ちしています。

更新ポリシー(陳腐化対策)

AI周辺の状況は変化が速いため、本書では「更新が必要な情報」と「原則として不変の考え方」を区別します。

更新が必要な情報(例)

  • 統計・サーベイ・市場動向など、年次で前提が変わりやすいもの
  • ツールのUIや操作手順など、画面変更で陳腐化しやすいもの
  • 手法名や用語が流行で変化しやすい領域(ただし、考え方そのものは残る)

原則として不変の考え方(例)

  • テストを「仕様・安全装置・回帰担保」として設計する考え方
  • 非決定性や不確実性を前提に、評価基準と責任分界を明確にすること
  • 自動化しても、人間のレビューと説明責任を残すという方針

本書および関連テンプレートの更新履歴は、今後 CHANGELOG.md(GitHub)で管理します。現時点ではテンプレート統合作業の履歴が中心ですが、今後は書籍本文の改訂も同ファイルに追記します: https://github.com/itdojp/ai-testing-strategy-book/blob/main/CHANGELOG.md


それでは、AI主導開発時代の品質保証という新しい冒険を始めましょう。この本が、あなたとあなたのチームの品質向上に貢献できることを心から願っています。

2025年 著者一同