付録
付録D
用語集
本書では、似た概念を意図的に分けて扱う。Prompt Engineering、Context Engineering、Harness Engineering は近いが別工程であり、task brief、Progress Note、context pack も役割が異なる。用語が揃っていないと、artifact の境界も壊れやすい。
本書では、似た概念を意図的に分けて扱う。Prompt Engineering、Context Engineering、Harness Engineering は近いが別工程であり、task brief、Progress Note、context pack も役割が異なる。用語が揃っていないと、artifact の境界も壊れやすい。
定義の source of truth は docs/glossary.md である。この appendix では、読み進めるうえで混同しやすい語をまとまりごとに整理する。後付けの source notes、読書案内、索引 seed は探し直しの装置であり、この appendix は語義と表記を固定する装置に集中する。
1. 成熟モデルの語
本書の流れは次の 3 段階である。
- Prompt Engineering: 単一タスクの入力と出力を Prompt Contract で固定する
- Context Engineering: task に必要な repo・task・session 情報を選び、保守する
- Harness Engineering: 実行境界、verification harness、再開、approval を設計する
この順序には意味がある。prompt が弱いまま context を足しても、単一タスクの失敗を大きな文脈で包むだけになる。context が弱いまま harness を足しても、間違った前提を丁寧に検証するだけになる。
2. 主体と道具の語
AI agent、coding agent、ChatGPT、Codex CLI は同じではない。
AI agent: 複数 step の判断とツール利用で作業を進める主体coding agent: repo を読み、code / docs / tests / artifact を変更し verify する AI agentChatGPT: 要件整理、比較、レビュー観点の洗い出しに向く対話環境Codex CLI: repo に対して実際の変更と verify を行う実行環境
この区別を曖昧にすると、「会話でうまく説明できた」ことと「repo で仕事が完了した」ことを混同しやすい。本書は後者を扱う。
3. 作業 artifact の語
本書で頻出する artifact は次のとおりである。
Prompt Contract: 単一タスクの目的、制約、完了条件、出力形式を定義する prompt artifacttask brief: issue を coding agent 実行向けに構造化した task 仕様Progress Note: 中断、handoff、再開のための短い進捗記録context pack: 特定タスクで読む最小参照情報の束verification harness: test、lint、typecheck、evidence、CI、approval を束ねた検証系recurring case: 章を跨いで同じ repo / issue / failure mode を追跡するための継続ケース
ここで重要なのは、どの artifact も「説明文」ではなく「運用のための入力」であることだ。artifact は人が読むだけでは不十分で、agent が使っても誤解しにくい形でなければならない。
4. Harness 運用の語
後半で重要になる語も先に揃えておく。
acceptance criteria: 機能または変更が満たすべき受け入れ条件done criteria: harness 上で完了扱いにする条件evidence bundle: reviewer が変更を検証できるように残す証跡一式restart packet: plan、feature list、最新Progress Note、verify evidence、open questions から成る再開時の canonical inputpermission policy: 自律実行と human approval の境界を定義する規則approval boundary: 破壊的変更、public contract 変更、運用ポリシー変更の前に human approval が必要になる境界work package: 1 回の session または 1 人の担当で安全に進められる最小単位Lead: issue 優先順位と承認境界を管理する human roleOperator: brief、artifact、verify、evidence を揃えて agent 実行を進める human roleReviewer:Goal、Changed Files、Scope and Non-goals、Verification、Evidence / Approval、Remaining Gapsを確認して merge 可否を判断する human rolestale draft count: review budget を超える前に queue 解消を促す draft PR 数の指標approval-stop rate: approval boundary や permission policy により run や PR が停止した比率hygiene backlog age: cleanup backlog の最古項目の経過時間
これらの語は近いが役割が違う。たとえば acceptance criteria は仕様側の条件であり、done criteria は運用側の条件である。前者を満たしても verify 未実行なら完了ではないし、後者だけ満たしても仕様を外していれば意味がない。
5. 2026年版で特に固定する語
2026 年版では、protocol と governance の語も drift しやすいため先に固定する。
MCP (Model Context Protocol): tool / resource / prompt などの context source を統一的に接続するための protocolA2A (Agent2Agent): agent 間の task 移譲、状態共有、handoff を扱う protocol 群tool drift: UI、CLI、API、tool capability が時間経過で変わり、本文や手順の記述とズレる現象human approval gate: 高リスク操作の前に human reviewer の確認を必須にする承認境界provenance: prompt、context、artifact、evidence がどの source から生成・更新されたかを追跡する来歴情報source hierarchy: 本文、repo artifact、official docs、組織ポリシーのどれを何の判断で優先するかを定めた優先順位
これらは本文の理解だけでなく、実務へ移すときの事故防止にも直結する。特に protocol と権限境界は runtime ごとの差が大きいため、本文と一次情報を併読する前提で使う。
6. 表記ルール
表記の揺れを減らすため、本文では次を優先する。
- repo や artifact 名は code と同じ綴りを使う
sample-repoはハイフン付きで固定するChatGPT、Codex CLI、Prompt Contract、Progress Noteは固有の綴りを維持する- 日本語本文では
AIエージェントと書いてよいが、glossary の基準語はAI agentとする
新しい章や artifact を追加するときは、まず docs/glossary.md に合わせる。用語の drift を後から直すより、最初に命名を揃える方が安い。
参照する artifact
docs/glossary.md